白羽山の迷宮、再び/Return to White Plume Mountain AD&D2nd 1999 その2

ケラプティス症候群/Keraptis-Imprints

 K症候群は2種類存在する:重度K症候群/complete K-imprintはこの計画を断念した時点のケラプティスの個性を具現化させる。軽度K症候群/partial K-imprintsは能力の一部分だけが具現化される。これらの種類にはまた2つの形態が存在する:潜在性/quiescentと顕在性/activeだ。

 潜在性K症候群は文書の形で存在する。PCにとっては、一般的な呪文を記した巻物か呪文書のように見える。これらの呪文に対してリード・マジック呪文を発動することで、『K症候群効果表』のいずれに属するかが明らかになる。例えば、“Kの火”が印されているなら、知的なクリーチャーにとって1レベル呪文として機能し、さらにファイアー・ボールの効果を使用することができる。〈呪文学〉判定に成功するだけでは、K症候群は他の1レベル呪文より強力であることしかわからない。単なる調査だけでは、これらの呪文の欠点は判明しない(『K症候群の副作用』参照)。

 顕在性K症候群は、知的なクリーチャーが巻物か呪文書からK症候群呪文を記憶した際に発現する。このような場合、K症候群は『K症候群効果表』に記された、再記憶する必要のない毎日数回使える疑似呪文能力を宿主に与える。
 

K症候群効果表/Effects of K-Imprints Table

K症候群種別利用可能な使用者呪文レベル効果
重度K症候群/K: complete imprint重度誰でも112レベルのウィザードと同じように呪文を選択でき、すべての軽度K症候群の利益を得る。
贋ケラプティス化を参照。
“Kの扉/K:door”軽度術者1ディメンジョン・ドア(10レベル術者として1日2回発動)
“Kの火/K:fire”軽度誰でも1ファイアーボール(5レベル術者として1日1回発動)
“Kの矢/K:missile”軽度術者1マジック・ミサイル(9レベル術者として1日3回発動)
“Kの抵抗/K:resistance”軽度術者140%の魔法抵抗(1時間、1日2回使用)
“Kの壁/K:wall”軽度術者1ウォール・オヴ・フォース(10レベル術者として1日1回発動)

 

利用可能な使用者/Allowed Users

 ほとんどのK症候群は、(ウィザードやプリーストのような)1レベル呪文のスロットを占有するため、呪文発動能力を持つキャラクターだけを宿主とすることができる。術者のスロットに余地がない場合、K症候群は自らの居場所を確保するため、記憶済みの1レベル呪文1つをランダムに失わせる。

 若干のK症候群はどのような知的クリーチャーでも使用可能だ。このタイプは可能であるなら、1レベル呪文のスロットを占有しようとする;それが不可能である場合、宿主の精神の一角に占めるために【知力】を1ポイント失わせる。(宿主の【知力】は呪文を除去することで回復する;『K症候群の除去』参照。)
 

K症候群の記憶方法/Memorizing a K-Imprint

 K症候群呪文を発動するか、書き写すか、記憶した個人は、+4ボーナスを得て対呪文セーヴィング・スローを行わなくてはならない。成功したなら何の効果も及ぼさない;呪文は巻物の上に残ったままで、使用者は何の利益も得ない。失敗したなら、呪文の効果とは無関係に、使用者は呪文を記憶する。つまり、キャラクターは巻物からK症候群呪文を発動することができない;彼または彼女は、セーヴィング・スローに失敗することで呪文を記憶するか、成功することで何の効果も及ぼさない結果となる。使用者がこれらの呪文を記憶する際、セーヴィング・スローを行わずに受け入れるのは可能であり、望むのであれば、ひとりのキャラクターが同じ呪文を複数回記憶することも可能だ。

 ひとたび記憶されたなら、K症候群呪文はページから消え去って利用者の精神に移動し、除去されるまでそこに留まる。宿主は即座に呪文に関する数値の変化(一日の使用回数、正確な効果、除去方法)に気づくが、現実的な副作用には気づけない。

 巻物を作成することができるキャラクターは、自分が記憶しているK症候群呪文を新たな巻物として作成することができる。そうしても呪文は宿主の精神から除去されない;それは新たな潜在性呪文を作るだけだ。
 

K症候群の副作用/Side Effects of K-Imprints

 個々の症状は違えど、すべてのK症候群は同じ落し穴を持つ:彼らに含まれるケラプティスの個性は、最終的に宿主の心を破壊してしまうほど激しく活動する。

重度K症候群
 ある重度K症候群宿主の個性は、行方不明のウィザードのそれに徐々に置き換えられていき、やがて新たなる贋ケラプティスが生み出される。それぞれの贋ケラプティスは、潜在的に無数の精神の頂点に立とうとする階層意識を持っている。その結果、贋ケラプティスは自身の力を際限なく強大化しようとするため、潜在性K症候群を蓄積していく(『既存の贋ケラプティス』参照)。もちろん、この傾向には良くない面がある - 新たなる贋ケラプティスはDM制御下のNPCとなり、かつ、もしオリジナル・ケラプティスが物質界に帰還したなら、彼あるいは彼女は即座に不可逆的に死ぬ(セーヴィング・スローなし)。

軽度K症候群
 軽度K症候群の宿主はその力の源泉である階層的精神に包括されてしまう。K症候群の宿主は1d4+2か月間は通常の生活を送れるが、やがて精神の欠如した肉体へと変化していく - その後は4人の贋ケラプティスの“外部脳細胞”と化す - 一般的には、渦中のK症候群巻物を手にしたままパーティに留まる。(どの贋ケラプティスに包括され支配されたことを明確にするなら1d4をロールしろ。)包括後は、宿主はすべてのキャラクター・レベル、【知力】値、【判断力】値、個性を失い、0レベルで4ヒット・ポイントを持つクリーチャーと化す。その後は食事をし、涎を垂らし、何かを凝視するだけになる。彼女は指導者だけと話し、その進む方向に進む。

 この運命は徐々に明らかになる。軽度K症候群を記憶する人は、3日後に奇妙な副作用を経験する。その時点で、影響下のキャラクターは1d6をロールして『K症候群の副作用表』を適用する。これはゲーム時間の24時間毎に繰り返す。副作用は何度でも起こるが、もしDMが望むなら追加効果を考えても良い。これら奇妙な問題は、最終的に被害者が階層的精神の中に取り込まれていくことに気づくだろう(告白した夢を介し、他者のみが)。
 

K症候群副作用表/K-Imprint Side Effects Table

1d6K症候群副作用
1罹患者は自身が純粋に悪しき行為を犯す夢に悩まされる。
2罹患者は注意されるまで「我はケラプティス」と繰り返しつぶやくようになる。
3罹患者は代わる代わる様々な強力な意識に観察されているように感じるが、正体を突き止める前にそれは薄れる。
4罹患者は注意されるまで「貴様が休んでいる間に、我は貴様らを殺すだろう」と繰り返しつぶやくようになる。
5罹患者はジャイアント・クラブを連想させるいたずら書きを、近くの壁や羊皮紙、適当な滑面に描きつける。これは誰かが絵の内容について思いつくまで続く。
6罹患者は仲間に対して以下のような「謎解き」を吹っ掛けるようになり、答えないなら彼女らを攻撃する。謎解きに応えないために開始された戦闘から3ラウンドが経過した後、罹患者は戦闘を打ち切り、いま何があったかをすっかり忘れ去る。

 彼女は丸いが、板のように平たく見える
 狼の王たちが崇めるもの
 黒き天鷲の上にあっては宝珠、海の下にあっては真珠
 いつまでも変わることなく、いつまでも変わり続けるもの
解答
 月
 

K症候群の除去/Removing a K-Imprint

 宿主は顕在性K症候群を、他の利用可能使用者に対して発動することで、自身の精神から除去することができる。この転移は意図的でなくてはならない;通常に呪文を発動しただけでは除去することはできない(“Kの火”呪文によるファイアーボールの発動など)。転移の目標がそれを逃れたい場合は、+4ボーナスを得た対呪文セーヴィング・スローに成功しなくてはならない。成功された場合、それは術者の精神に留まる;失敗した場合、K症候群は目標に転移され、通常の記憶に伴う利益と不利益を受ける。しかしながら、この転移を行なっても、元々の宿主は副作用を受け続ける(上記『K症候群の副作用』参照)。
 

包括の遅延/Halting Subsumption

 宿主の精神からの呪文を除去したとしても、包括化を止めたり遅延させることはない。なぜならケラプティスの個性の烙印は永久に残るからだ。罹患者は次元界を離れることで過程を遅延させることができるが、この次元界に帰還することで“白羽山”との空間的距離に関わらずそれは再開する。

 包括化の過程を止める唯一確実な方法は、本物のケラプティスをこの次元界に呼び戻すことだ。軽度K症候群によって具現化された彼の不完全な精神は、オリジナルと同じ空間に存在することはできない。そのためそれらは宿主に危害を与えることなく消滅する。しかしながら、この解決策をパーティーは知らない - キャラクターは山の住民から情報を得なくてはならない(第25区画のニックス、第74区画Cのマイコニド、第79区画の復讐のシェイド)。すべての贋ケラプティスとその手勢を抹殺することで包括化は防げるが、感染したPCが新たな階層的精神の基盤となる可能性が高い(『贋ケラプティス化』参照)。
 

贋ケラプティス化/Becoming a False Keraptis

 重度K症候群を記憶した宿主、または軽度K症候群で1レベル呪文のスロットか【知力】値すべてを埋めた宿主は、ウィザードの個性が内面に生まれ、即座に新たなる贋ケラプティスと化す。そして罹患した宿主が残存している場合、その者に取って代わって精神的階層を上げるため、既存の贋ケラプティスを抹殺しようとする(『既存の贋ケラプティス』参照)。

 どのPCが贋ケラプティス化したとしても、即座ににDM制御下のNPCと化す。新たな僭称者はすぐに権力基盤を築き、自身の力の武器を求め、他の贋ケラプティスを抹殺すべく動き出す。
 

新たな贋ケラプティスの作成/Developing a New False Keraptis

 DMが追加で贋ケラプティスを作成する(またはかつてのPCをNPC贋ケラプティスとする)ことを望むなら、以下の案内に従ってキャラクターの能力を確定しろ。

 新たな贋ケラプティスは呪文効果について12レベル・ウィザードとして作成され、そこに彼女が通常に使用するパワーや能力を加える。発症の時点で、DMは毎日使用する呪文(1レベル4つ、2レベル4つ、3レベル4つ、4レベル4つ、5レベル4つ、6レベル1つ)を新たな僭称者のために用意しなくてはならない。利用可能な選択肢にはキャラクター自身の呪文書や(可能な範囲の)プリースト・リストに以下のリストが加わる。これらはオリジナルのウィザードの呪文書に因るものだ:

  1. チャーム・パーソン、マジック・ミサイル、スリープ、ウィザード・マーク、K:コンプリート・インプリント *1
  2. アシッド・アロー、コンティニュアル・ライト、ダークネス(半径15フィート)、ESP、ノック、マジック・マウス、ミラー・イメージ、ウィザード・ロック
  3. ディスペル・マジック、ファイアーボール、フライ、ライトニング・ボルト、モンスター・サモニング1、スロー、タング
  4. チャーム・モンスター、ディメンジョン・ドア、エンチャンテッド・ウェポン、エヴァーズ・ブラック・テンタクルズ、アイス・ストーム、インプルーヴド・インヴィジビリティ、モンスター・サモニング2、ポリモーフ・アザー、ポリモーフ・セルフ、ストーンスキン、ウィンド・ウォール、ウィザード・アイ
  5. アドヴァンスト・イリュージョン、クラウドキル、コーン・オヴ・コールド、カンジャー・エレメンタル、ディスミサル、モンスター・サモニング3、トゥルー・シーイング、ウォール・オヴ・フォース、ウォール・オヴ・ストーン
  6. コンティンジェンシィ、デス・フォッグ、デス・スペル、グローブ・オヴ・インヴァルナラビリティ、モンスター・サモニング4、テンサーズ・トランスフォーメーション

(7レベル以上の呪文は、贋ケラプティスがその呪文を発動するにふさわしいレベルに達した時点で入手可能になる。)DMが呪文選別を決定するとそれは宿主の精神内で永続化され、すべての呪文に軽度K症候群があるかのように扱われる。新たな贋ケラプティスがのリストに呪文を加えるためには、包括的精神が経験点レベルを上げなくてはできない;その時点で新たな選択肢が示される。(この選択は既存の階層的精神に新たな座を占めなくては存在しない;そうでないものは既存の呪文を得るだけだ。)

 他の贋ケラプティスのように、新たな僭称者も呪文を介して他者の肉体を操れる。互いの目で見て、互いの口で話し、互いのアクションを行なう。
 

既存の贋ケラプティス/The Existing False Kerapti

 現在、“白羽山”に存在する4体の贋ケラプティスはケラプティスを自称し、自身に忠誠を誓う軍隊を従えている。しかしながら、それぞれの“僭称者/pretender”とその手勢は他の贋ケラプティスを“簒奪者/usurpers”と呼んでいる。名前を呼ぶ必要がある場合は、抵抗勢力の指導者ニックスが名付けた、“夜闇恐れ”、“泥跳ね波止場”、“興醒め屋”、“ぶつぶつ苔”を使う。4体の贋ケラプティスはウェイヴ、ホウェルム、ブラックレイザー、フロストレイザーを私物であると信じ込んでいる。もしPCがそれらのひとつを他の贋ケラプティスの前に示すなら、僭称者は即座にそれを差し出すように要求する。そのような場合だけ同盟交渉は可能であり、それに応えないのであれば交渉は決裂して攻撃が起こる。
 
能力/Abilities
 それぞれの贋ケラプティスは12レベル・ウィザードとしての完全な呪文発動能力を持ち、加えてケラプティスの完全な個性と重度K症候群がもたらす記憶を持っている。しかしながら、K症候群はオリジナルの精神の完全な複製ではないため、それぞれの僭称者の記憶の大部分はかすみ、また欠落している。

*1:重度K症候群にはすべての軽度K症候群が含まれ、宿主が通常に使用する呪文や作成する巻物にもこれらが含まれる。

白羽山の迷宮、再び/Return to White Plume Mountain AD&D2nd 1999 その1

裏表紙

不滅性への飽くなき追求が、桁外れの脅威を引き起こす!

 いにしえの時代、ケラプティスという名前のソーサラーが永遠の生命を求めた。活火山のマグマ・ドームと水蒸気道の中で彼は秘術的実験を追求した。最終的に彼は伝説の中に消え去った。そして世界は一千年以上もの間ケラプティスについて耳にすることはなかった。

 しかしながら、20年前ケラプティスが“白羽”に現われた。その山に君臨する狂える君主はその力を遺憾なく発揮した。しかし最終的に勇気と正義に屈した。ケラプティスは遂に死んだ…、世界はそう結論した。

 あれから20年の時が流れた。現在、火山の噴煙にひとつの顔が浮かび上がった - あれはケラプティスの顔であると人々は口にした。猛悪なるウィザードは結局のところ不滅性を得たのだろうか? または“白羽山”の地中にはより危険な脅威が存在するのだろうか?

 ローレンス・シックによる最初の『S2:白羽山の迷宮』は1979年に発表されたAD&Dゲーム最初期シナリオの1つだった。もし君がその火山の冒険に楽しい思い出を持っているなら、君はこの冒険を以前のものより危険で魅力的なものと感じるだろう。もし君が初めて“白羽山”に挑むのならこれは決して忘れられない経験となるだろう。

 これは7-10レベルのキャラクター4-10人向けに作られている。
 

概要/Introduction

「彼は火口の下にもつれるように複雑な火山性坑道を発見した。彼とノームたちは間欠泉の影に消えた。その後、人々は悪しきウィザードの話を耳にしなくなった。」

ケラプティスの伝説、『S2:白羽山の迷宮』より
 
 ローレンス・シックによる『S2:白羽山の迷宮』は、D&Dの拡大期に発表された。この冒険は最初期に記されたシナリオのひとつであり、大勢のD&Dファンがこれを購入してプレイした。その結果『白羽山の迷宮』は長い間、その時代におけるDMとプレイヤーたちの間の“共通体験”として語り継がれることになった。君が火山にまつわる楽しい思い出を持つのか、それとも初めて『白羽山の迷宮』と立ち向かうかはわからないが、この続編はこの後も語り継がれる無数の新キャンペーンの礎石となるだろう。
 

この冒険の使い方/Using This Adventure

 このAD&D冒険は、7から10レベルのPC4人から10人向けに設計されている。一行のキャラクター・レベル合計は45以下にすべきだが、低レベル・キャラクターの集団で山に挑むと生還すら覚束ないだろう。そのような場合、DMはPCに対し、複合体に居住する様々な集団との同盟を奨励すべきだ。

 『白羽山の迷宮、再び』は、内部に居住空間を擁する離れ火山で展開される。君はこの製品を単独冒険として扱っても良いし、君のプレイヤーがかつて『S2:白羽山の迷宮』に挑んだ古強者であるなら、このシナリオを20年後に起きる続編と位置付けても良い。君がこの物語をどのように提供するにしても、最初の出版物を所有したり読み込んでおく必要はない;君が『白羽山の迷宮、再び』を動かすために必要な情報はすべてここにある。

 地名や人物名は絶対ではない - 君のキャンペーン世界に適合させるため、“白羽山”に関する情報は何でも変更して構わない。君は火山という設定すらも、休火山または高台、なんなら草原、沼沢地、森林に変更しても良い。もし君のゲームがオアースのグレイホーク・キャンペーン世界で行なわれるなら、“白羽山”はシールド・ランズ/Shield Landsの北東、山賊王国/Bandit Landsとリフト峡谷/Great Liftの付近に位置する。

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訳注:★“白羽山”、①自由都市グレイホーク、②アイウーズの領国、③シールド・ランズ、④山賊王国、⑤リフト峡谷。なお、本書の地名とグレイホークの地名には若干の誤差がある。コーデルだから。


 陰付枠の文章はプレイヤー向けの情報だ。DMはそれを声に出して読むか適切に言い換えろ。枠のみの文章はDM向けの重要な情報で、そこにはモンスターや魔法のアイテムに関する記述が含まれる。本書の末尾には、名前付きNPCを除く、冒険に登場するすべてのモンスターのデータが掲載されている。必要に応じてこれら4ページをコピーして使用しろ;モンスターのデータは個々の遭遇に記載していない。
 

“白羽山”の歴史/History of White Plume Mountain

 “白羽山”の歴史は古代のウィザード・ケラプティスと分かちがたく絡みあっているが、学者たちでさえすべてを知っているわけではない。この基礎的な情報はDMのために提供されている;PCが勤勉な研究の末に発見できる情報は別に項を設けている(『歴史調査』参照)。
 

古代史/Ancient History

 およそ2000年前、ウィザードのケラプティスはトゥスティンカ/Tostenhca - 幅広い道とそびえ立つジグラットを有する山裾の都市 - の“防護官/protector”に任じられた。ウィザードは寿命を延長し、多くの定命者よりも長く生きていたが、彼はあくまでも不滅性を求め続けていた。そのためか、彼は歳を経るにつれ堕落していった。4世紀に渡る期間、彼の防護/protectionに費やす代償は徐々に厄介になっていった。最終的に、ケラプティスはトゥスティンカの人々が育み、作り、売る、財のすべてを管理するに至った。新たな税 - 新生児の3人に1人を捧げる - が発表された時点で人々は立ち上がり、ケラプティスと狂えるノームの護衛団を追放した。

 拠点を失ったウィザードと彼の追従者は、南部や西部の諸都市に逃れた。だがケラプティスがどこに向かっても、彼の評判は彼より先に辿り着いていた。そして彼は誰も彼の“防護”を求めていないことを知った。この旅は3世紀に渡り、その間にウィザードは並外れた力を秘めた装具をいくつか入手した。彼に護衛団を与えたノームの秘密会議は、さらにホウェルム/Whelmと呼ばれる槌を与えた。諸神格により投獄された神話的サイクロプス/mythical Cyclopesの獄を破壊した返礼として、ケラプティスはウェイブ/Waveと呼ばれるトライデントを贈られた。遥か未来、滅びを目前にした多次元界の最後の生ける存在と交信した結果、彼はブラックレイザー/Blackrazorと呼ばれる剣を受け取った。しかし、真なる不滅性は彼の手にはなかった。

 トゥスティンカを去って300年後、ケラプティスは“白羽山”と呼ばれる大火山で、上古の生き残りであるドルイドが、不滅性の秘密を守護していると知った。火山の中で、ウィザードは溶岩トンネルで作られたもつれた迷宮と、上古の秘密を守護する古代のドルイドを発見した。2人は“白羽山”の所有権と古代の神秘を賭けて大戦闘を行なった。最終的にウィザードが勝った。ドルイドの残骸をマグマの海に放り込んだ後、勝ち誇ったケラプティスはドルイド正殿の溶けた岩で封じられた秘密の小部屋に入り込んだ。そこで彼は古代魔法の財宝と、氷の刃の原型とも云えるフロストレイザー/Frostrazor、そして得体が知れない小像を発見した。ケラプティスは小像の力を解放し、はるか彼方のトゥスティンカに対して凶悪な呪いを解き放ち、永き復讐の仕上げとした。

 その後、ケラプティスは彼の膨大な能力のすべてを死を克服することに傾注した。彼は永続化魔法や治癒といった外部要因に頼らない、1ダースもの個別の、永遠の生命に収束していく研究を開始した。そのような計画のひとつが実を結んだ。最終的にケラプティスは取得した4つの魔法の装具で増強することで、物質界からはるか隔たった陰鬱な領域にまで踏み込むことに成功した。そこで彼は永遠に定命の束縛を脱するだろう。

 ケラプティスが火山を去ってから約500年が過ぎた。彼が究極の目的を達成したか、それとも薄暗い次元界でそれを追求し続けているか、誰も知らない。彼の運命の如何に関わらず、ケラプティスは“白羽山”に帰還しなかった。
 

近代史/Recent History

 主のないまま、ケラプティスに忠誠を誓ったノームの部隊は活火山に留まり、ウィザードが洞窟内に魔法で成長させた菌類の庭園に住み続けた。外部との関りのないまま世代は交代し、陽光を受けない環境で彼らは生まれ、そして死んでいった。

 100年ほど前、ついに“白羽”の下の穏やかな日々が打ち砕かれた。財宝の物語に引き寄せられ、“大冊の兄弟団/Brotherhood of the Tome”を自称する少数の強力な英雄たちが封印された火山の空洞に入り込み、ウィザードの力の4つの装具:ウェーブ、ブラックレイザー、ホウェルム、フロストレイザーを盗み出した。これらの武器が盗みだされたことで、ケラプティスは陰鬱な領域に閉じ込められ、彼は物質界への帰還が不可能となった。

 “白羽”の住民は、部外者に山中の複合構造について知られた今、さらなる攻撃が起こることを危惧した。防護を求め、ノームはケラプティスが研究を行っていた封印洞窟を開いた。そこで彼らが多くの驚異を発見したが、白眉であったのは“白羽山”の運命を永久に変えた“ケラプティス症候群/Keraptis-imprints”だった。

 不滅性についての研究の一環として、ケラプティスは自身を呪文の基礎構造のように純粋な知性として保存しようとした。この方法を使うことで、彼は理論的に他者の精神の内側に永久に住み着くことができた。最終的に彼はこのアイデアを放棄したが、彼の研究成果の残滓 - 呪文巻物に似た形態 - は残されていた。これらの魔術(ケラプティス症候群またはK症候群と呼ばれる)は、いずれも破損しているか不完全であったが、ウィザードの意識と知識が一部またはすべて含まれていた。

 これらの巻物は解放された部屋のひとつで発見され、熱心なノームが即座にそれを記憶した。それと共に不完全ながらウィザードの意識の複写が彼の精神にインストールされた。彼は自身をケラプティスと信じ込むと即座に行動を開始し、古代のウィザードが所有していた力の武器を集め直した。オリジナルの『S2:白羽山の迷宮』は、最初の贋ケラプティスが行動した結果だった。
 

現在の状況/Current Situation

 最初の贋ケラプティスの死から20年以上が過ぎ、山の地下は大きく変化していた。彼の轍を他の者が踏み、それぞれが帰らざる君主の意識を得た。

 現在、4つの個体 - 夜闇恐れ/ナイトフィアー/Nightfear、泥跳ね波止場/スパアタードック/Spatterdock 、興醒め屋/キルジョイ/Killjoy、ぶつぶつ苔/モスマター/Mossmutter - が自身をケラプティスと信じこんでいる。これらの個体は全員が贋ケラプティスであり、銘々が元々のウィザードの人格と能力を刷り込まれ、4つの力の装具のうちひとつを保有していた(最近“夜闇恐れ”はそれを失った)。これら贋ケラプティスは忠実な追従者の軍勢を従え、山の支配権と魔法の武器4つすべての所有権を賭けて競い合っている。
 

冒険の要約/Adventure Summary

 “白羽山”に到着したPCは、入口に直接向かっても構わないし、まず火山周辺を探索しても構わない。彼女らは、山の内部でケラプティスを自称する4つの勢力が争い合っていることを知る。ちょっとした交渉術を駆使することで、他の3勢力と戦うため、いずれかの贋ケラプティスの軍勢と手を組むこともできる。最終的に、4つのケラプティスはすべて贋者であり、本物はここにいないことが判明する。

 PCが贋ケラプティスの軍勢に合流するか否かに関わらず、彼女らはプレイの過程で様々な部分的K症候群呪文を発見していく。これらの呪文を記憶していくことで、その者は自我を失って行き、段階的に贋ケラプティスと化していくことに気付く。PCは抗争とは無関係な山の住民と接触することで、このケラプティス感染症を山中に封じ込め、世界(と自身)を救い出すかを見つけることができる。より簡単な方法は、彼女らがウィザードの魔法の武器4つをすべて集め、ドルイドの正殿(第79区画)に侵入し、この次元界にオリジナリティナル・ケラプティスを呼び戻すことだ。もうひとつの方法は、パーティメンバー含むすべての顕在K症候群感染者を、追い詰め、捕え、皆殺すことだ。もし彼女らが前者を選択するなら、復活するオリジナル・ケラプティスは新生児として出現するため、彼を抹殺しようとするクリーチャーたちから守り抜かなくてはならなくなるだろう。

“大分割”と版上げ前後のシナリオ

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 “大分割”と版上げ前後のシナリオの舞台をまとめたもの(マップは4版時代)。
 
 

『ドラコリッチの宝物庫』

 5版(ネクスト版)シナリオ。
 2013年6月に行われたD&Dゲームデイで使用されたもの。複数パーティによる同時襲撃を描いている。
 全世界のD&Dプレイヤーが同じシナリオを攻略するイベントだが、日本では複数卓実施は厳しかったと推測する (ΦωΦ)
 コーマンソー森林を棲処とするドラコリッチの宝物庫が舞台。
tirthika.hateblo.jp
 
 

『ドラゴンスピア城の亡霊』

 5版(ネクスト版)シナリオ。
 2013年8月15日-18日に行われたGenCon2013で初公開された販売シナリオ
 レッド・ウィザードによる元素邪霊復活を阻止しようとする冒険者の物語。いわゆる過去版であった「複数鍵の争奪戦」型シナリオ。
 ウォーターディープ南隣のダガーフォードが拠点となる。
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 ちなみに、有名なウォーターディープは地図上、「ダガー」の「-」の南側に位置している。ネヴァーウィンターは「ダ」の北側である。
 
 

『キャンドルキープ襲撃』

 5版(ネクスト版)シナリオ。
 2013年8月15日-18日に行われたGenCon2013のイベント用シナリオ。よって極めてプレイ人口の少ないシナリオとして忘れられている。
 “アスモデウス神に選ばれし者”による拠点襲撃防衛シナリオ。システム的に複数パーティが必要なのも難あり(単パーティで挑んでもよいけど)。
 バルダーズゲート南隣のキャンドルキープで展開される。
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“大分割”四部作第一弾『殺戮のバルダーズゲート』

 4版・5版共用シナリオ。
 2013年8月20日開始のエンカウンターズ第15節の販売シナリオ。
 “殺戮の神”ベハル *1 復活に絡む物語。

ダンジョンズ&ドラゴンズ 殺戮のバルダーズゲート

ダンジョンズ&ドラゴンズ 殺戮のバルダーズゲート

 
 

“大分割”四部作第二弾『クリスタル・シャードの影』

 4版・5版共用シナリオ。
 2013年11月19日開始のエンカウンターズ第16節の販売シナリオ。
 舞台は先ごろ電子書籍にて再販されたアイスウィンド・サーガの舞台でもあるテンタウンズ。そしてその地を襲う“オーリル神に選ばれし者”に絡む物語。

 
 

“大分割”四部作第三弾『レッド・ウィザードの野望:ソード・コーストの受難』

 5版(ネクスト版)シナリオ。
 2014年2月18日開始のエンカウンターズ第17節のPDF販売シナリオ。
 舞台は上記『ドラゴンスピア城の亡霊』でも登場したダガーフォード。その地を襲うレッド・ウィザードの飽くなき暴威に立ち向かう冒険者の物語。
 実のところ『ドラゴンスピア城の亡霊』の直接的続編であるのだが、キャラクター・レベルの関係で同キャラでの継続ができないもんにょり仕様。
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“大分割”四部作第四弾『レッド・ウィザードの野望:サーイに死す』

 5版(ネクスト版)シナリオ。
 2014年5月20日開始のエンカウンターズ第18節の販売シナリオ。
 前作『ソード・コーストの受難』の直接的続編で、『ドラゴンスピア城の亡霊』から考えると、ダガーフォード三部作の完結編とも云える。
 このシナリオ自体は若干の修正を経て『大口亭綺譚』に掲載されている。

ダンジョンズ&ドラゴンズ 大口亭綺譚 第5版

ダンジョンズ&ドラゴンズ 大口亭綺譚 第5版

*1:1版から2版にかけての事件である“災厄の時代”で滅ぶ

キャンドルキープ襲撃/Confrontation at Candlekeep D&D Next 20130815


背景/Background

 はるか昔、アスモデウスは手ずから強力な心術呪文を作り上げた。それはどんなクリーチャーでも術者の令下に置き、かすかな魔法的痕跡すら残さず術者の意志に従わせるほど効き目があった。呪文はあまりに効き目があったため、記憶しておくのも危険なほどだった。そのためアスモデウスは、その卑劣な呪文を1巻きの“巻物”として記録することにした。

 ミストラは呪文の存在を知り、それを無きものとすることを望んだ。しかしながら、“巻物”の破壊はそのエネルギーがアスモデウスに還元されるだけであることを危惧した彼女は、自らの“選ばれし者”のひとりを送り込み、それを奪い隠匿させた。

 爾来巻物はキャンドルキープ - フェイルーンの口伝と予言を収集した巨大な図書館 - の大冊と羊皮紙の間に埋もれていた。現在、レルムは大変動と復旧の時代に直面している(『大分割とは?』参照)。アスモデウスは彼の“巻物”の所在を知ると“選ばれし者”ヴァルローンを指名し、広大かつ強力な防御を打ち砕いて“巻物”を見つけ出し、九層地獄の力を返還させるべくキャンドルキープに急行させた。
 

 この竜、この後にスカウトされたんだねぇ…
 いや、当時から“選ばれし者”だったのかもな (ΦωΦ)
 

冒険の要約/Adventure Summary

 冒険者がキャンドルキープを訪問している時、ヴァルローンという名前のアスモデウスの“選ばれし者”が拠点に対して攻撃を開始した。秘密裏に潜入したアスモデウス教徒が要塞の防御陣の多くを機能停止させたため、襲撃に対処することは困難だった。

 冒険者はキャンドルキープの防御を支援する任務を与えられる - 防御陣の回復、敵の抹殺、情報の収集。最後の遭遇において、冒険者たちは“大障壁/グレート・シールド” - 侵入者を放逐し、襲撃を塞き止める不壊の障壁 - の再起動を支援する。
 

キャンドルキープの世間話/Small Talk in Candlekeep

 冒険の過程で、キャラクターがキャンドルキープに住む1人以上のNPC会話をする機会かある。君が何気ない話題を即興で作ろうと考えているなら、以下のキャンドルキープと周辺に関連した情報を利用しろ。

  1. キャンドルキープはいにしえより、遥かいにしえより存在しているので、誰がいつそれを築いたかについては様々な人々が意見を異にしている。キャンドルキープは常に現在の場所にあった。そして石造りの要塞は、常にオグマ神崇拝の中心地だった。
  2. キャンドルキープの修道僧は主にオグマ神やデニーア神を崇拝する学者司祭だ。しかし多くの賢者と“知識の探究者”が、長期間修道要塞に滞在する。
  3. (君がオグマ神の高位司祭か極めて特別な理由を持たない限り)キャンドルキープに入るには、入館料金として収蔵書籍となる貴重書を提供しなくてはならない。
  4. キャンドルキープが主に静かな研究の場であるが、その広間にはアローンドに捧げる終わりなき讃歌が響き続いている。詠唱者に導かれた下級・上級修道僧が、いまだ「実現していない」アローンドの予言を歌いながら僧坊を繋ぐ長い回廊を進む。この行進は決して止まらず、各々の修道僧は途中で交代していく。
  5. キャンドルキープはしばしばその蔵書から書籍/ページを写本し、収入を得るために売買する。呪文や重要な魔法作業、信仰の秘儀に関する写本は滅多に作成されず、極めて高価だ。他にも有用な作品は、フェイルーン各地の貴族や富裕層、図書館が購入を求めてくる。

 

イベントの展開/Running the Event

準備/Setup(10分)

行動の開始/Starting the Action(10分)

エリア1. 亡霊竜の広間/Area 1. Ghost Dragon Hall(45分)

エリア2. 自然の驚異の図書館/Area 2. Library of Natural Wonders(45分)

エリア3. ろうそく砦の断崖/Area 3. Bluffs of Candlekeep(45分)

エリア4. 学びの塔/Area 4. Leaning Tower(45分)

エリア5. 干上がった泉/Area 5. Dry Fountain(45分)

エリア6. オグマ神の祠/Area 6. Shrine of Oghma(45分)

エリア7. 題名不明の図書館/Area 7. Library of Lost Titles(45分)

エリア8. ろうそく砦の防壁/Area 8. Walls of Candlekeep(45分)

最後の衝突/Final Confrontation(45分)

 

結末/Conclusion

 2時間のプレイ・スロットが終了した時点で、ポッド(相互に連動した4-9個のパーティ集団)単位で少なくとも半分の修道僧が生き残っていれば、“大障壁”が再起動する。

ポッドが成功したなら、“第一読師”は以下を読むか読み替えろ:

 キャンドルキープ中の塔から、白い光束が空に向かって伸びあがる。やがてそれはゆっくりと集まると、君たちすべてを内に含む巨大な球形を作りだした。ソード海の打ち寄せる波のように、あなたの足元の大地を力場の鼓動が打ち鳴らす。キャンドルキープの危険に気づいたクリーチャーは、光の壁から後ずさった。下がらなかった者は焼かれた。静寂が要塞を包みこむ。数秒の後、疲れてはいるが歓喜喝采が湧きおこった。キャンドルキープは安全だ - 今のところは。

ポッドが失敗したなら、“第一読師”は以下を読むか読み替えろ:

 キャンドルキープ中の塔から白い光束が伸びあがるが、そのエネルギーはあまりにも早く拡散して消える。“大障壁”を再起動する君たちの試みは失敗した。大音声が轟く。「撤退だ!」 君は外壁と正門から修道僧が我先にあふれ出てくる様子を目にした。背後を血に飢えたデヴィルとケタケタ笑う狂信者が追いかけている。君はキャンドルキープの別の個所を担当した冒険者が、“大障壁”の再起動に成功しないものかと期待しながら、撤退戦を開始した。

 

終幕/Wrapping Up

 プレイヤーが立ち去る前に、彼女らに次の機会と結果について知らせろ。

イベントに再挑戦する/Replaying the Event

 このイベントは最高8つの異なるシナリオから成る。もし彼女らが他のシナリオの利用を望むなら、プレイヤーはこの週末中イベントに参加することができる。
※訳注:このシナリオは2013年のゲン・コン/Gen Conで使用されたもので、開催期間である週末を通して幾度でも挑戦することができた。

イベントを動かす/Running the Event

 もしプレイヤーがこのイベントを回すことに興味を持ったなら、D&D本部ブースのスタッフに話をしろ。このDMは簡単で、おまけにこのD&Dシナリオセットが君に与えられる。スタッフは君のD&Dネクスト人生の始まりを手助けしてくれるだろう。

小説『使者』との関連/Connection to The Herald

 『キャンドルキープ襲撃』のイベントは、“大分割”とエド・グリーンウッドの2014年の小説『使者』と関連する。ゲン・コン2013におけるこの冒険の結果は、小説開始時にエルミンスターがキャンドルキープで経験する出来事に反映される。

意見/Feedback

 プレイヤーはD&Dネクストと『キャンドルキープ襲撃』についての意見を、ウィザーズのプレイテスト担当まで送ることができる。
 

“大分割”とは?/What Is the Sundering?

 “大変動の時代”の終わりは近い!
 
 フォーゴトン・レルム世界は、“災厄の時代”から“呪文荒廃”を介し、1世紀にも渡る数々の破局を耐え抜いた。幾度も幾度も、大変動は万神殿を打ち壊し、国家と支配者を打ち砕き、大地の形すら変えた。現在、世界は揺らぎ、いま一度再構成されている - 最終段階として。
 
 諸神格は新たなる万神殿に座を占める契約を勝ち得るため、混沌に投げ込まれ、這い上がった者だけが権能をつかみ、権威を強固にすることができた。世界中にいる彼女らの定命の代行者 - “選ばれし者” - は、彼女らの意志を遂行する責任を課された。
 
 劇的に世界を再構成させた魔法の破局、“呪文荒廃”は終わった。魔法のウィーヴは編み直され、多くの歪んだ魔法効果は徐々に消え始めている。“呪文荒廃”によって引き起こされた世界の混在は終焉を迎え、アイビアはアイビアに分かれ、フォーゴトン・レルムは以前と同じ姿を取り戻した。
 
 “大変動の時代”の終わりに生じた不穏な政治的状況から、諸神格の“選ばれし者”の活動も激しさを増し、フェイルーン諸国と派閥はそれぞれの計略、策略、侵略に巻き込まれていった。特にネザリル帝国は、デイルランズ、コアミア、ミス・ドラナーを征服しようと試み、東ハートランドを呑み込む戦争を引き起こしている。ハーパーとゼンタリムは世界に拡大する脅威に対処するため組織を集中再編し、徐々にだが以前の規模を取り戻しつつある。国家、地理、魔法、そして諸神格さえ永劫ではなく変転している。産みの苦しみは新たな創造の先触れなのだ。世界には英雄が必要だ。新たな時代を導く希望の曙光であり、襲い来る闇に中で瞬き続ける善の輝きであるからだ。

サイコパスSS2 ファーストガーディアン

 サイコパスZERO


 青柳さんと征陸さんと須郷さんのお話。時間軸は第一シーズンの前の全盛期。

 フットスタンプ作戦が無駄だったことを除いて、地に足の着いた悪くない作品 (^ω^)

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コード・ギアス 復活のルルーシュ

 あの定番の技が、ついにギアスに導入!


 なんかいろいろと細かいところをスルーしているように見えるけど、いろいろあってルルーシュ復活。
 いや、もっといろいろ語らないといけないところあるよね、つうかご都合でお話進んでるよね。というイメージで終幕。


 次回作は「そして100年の時が流れた…」で良いかもしれない (°ω°)


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続きを読む

翔んで埼玉

 自虐


 神奈川人だからかイマイチのれず。
 漫画の乱闘をうまく映像化する方法を誰か考えてくれ (ΦωΦ)


 どうものれない理由は、30年前の作品なのでネタのほとんどが使い尽くされてしまっているからかもしれない。
 ネットミームとして拡散したネタがオリジナルとして現れても、感覚的には二番煎じなのだ。


 時間とは難しいものだ ( ゜ω゜).。o0(なあ、せむしのぺピンよ


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ドラコリッチの宝物庫/Vault of the Dracolich D&D Next 20130600


 

裏表紙

財宝と栄光が待っている

 コーマンソー森林/forest of Cormanthor の奥深くに、ドラコリッチ・ドレトクロヤステル/Dretchroyaster(発音記号に従うとドレッチロヤズター)の財宝が横たわる。その中には古代エルフ王国の秘密を解き明かすと噂されるダイアモンド・スタッフが含まれている。賢者イマーニ/Imaniは多くの冒険者たちを求め、アンデッド・ドラゴンの棲処に対して全面攻撃を掛けるつもりだ。ドラコリッチは強力な敵であり - 複数のパーティーで挑んでも征服が困難なほどに - 勇者たちは持てる勇気、知恵、素早さを駆使してドラコリッチの致命的な宝物庫を目指すだろう。

 『ドラコリッチの宝物庫』は2013年6月に行なわれたD&Dゲーム・デイのために記されたダンジョン&ドラゴンズ・ロールプレイング・ゲームの冒険だ。この挑戦はゲーム・コンベンションで使用される対話形式を取り入れている。その一環として、DMとプレイヤーは他卓と対話をする機会が与えられる。そしてイベント調整士は、各グループの脅威となるドラコリッチの運用を受け持つ。この冒険にはフルカラーの両面型バトル・マップが含まれている。
 
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背景/Background

 何千年も昔、一般的な尺度を大きく超える魔法と知識を修めたエルフ王国ウヴァイレン/Uvaerenがあった。エルフたちは現在デイルランズとして知られる地に、知識を貯え守るための宝物庫を設けた。それぞれの宝物庫には秘密を解放するための鍵がそれぞれ用意されていた。ザ・ダイアモンド・スタッフ・オヴ・ホミルラ/The Diamond Staff of Chomyllaもその鍵のひとつであり、ウヴァイレンの失われた口伝を見つけ、解き明かすために必要だった。しかしながら、この鍵はコアミアで最も恐れられる獣 - ドラコリッチのドレトクロヤステル - の手中にあった。

 巨大な亀裂の地下にある、死せる神格ベハルの忘れられた神殿に築かれたねじれた棲処では、ドレトクロヤステルと彼に味方するドラゴン・カルトが、最近になってようやくダイアモンド・スタッフとウヴァイレンの口伝の関連性を発見した。ドラコリッチは単に口伝を求めているわけではなかった。彼はスタッフを焦点具として宝物庫の魔力エネルギーを用い、失われたウヴァイレンのすべてのパワーを吸収しようとしていた - それにより自然界のクリーチャーの枠を超え、諸神格に匹敵する力を手に入れようとしていたのだ。
 

冒険の要約/Adventure Summary

 かつては冒険者であったターミッシュ人ウィザードであるイマーニは、ドレトクロヤステルの棲処に潜入してザ・ダイアモンド・スタッフ・オヴ・ホミルラ - 数千年前に強力な魔力と知識と封じた鍵 - を奪還するために勇者の助力を求めている。イマーニは自身が賢者として失われたウヴァイレンの口伝に興味を持っているだけでなく、強力な魔法が悪の手に落ちることの危険性を認識していた。

 ドラコリッチはスタッフを棲処のど真ん中にある洞窟に安置した後、ベハル・カルトに帰属する偶像アーティファクトを使うことでのみ通過することができる古代の警報で封じた。それぞれの冒険者グループは別々の入口からダンジョン - ベハル神の忘れられた神殿、巨大な地底湖、トログロダイトの村、ドレトクロヤステルの宝物庫 - に侵入する。

 ドレトクロヤステルの棲処は大洞窟と古代の廃墟を単純に組み合わせたものではない。それは巨大なパワーとエネルギーの源泉に位置し、ドラコリッチとドラゴン・カルトはスタッフの秘密を解き明かそうとしているのだ。ドレトクロヤステルの棲処に対して組織的な襲撃を敢行することで、冒険者はダイアモンド・スタッフを奪還し、ドラコリッチの憤怒から生還することができるだろう。

 冒険者は棲処を通り抜け、ダイアモンド・スタッフを解放するために必要なベハル神の偶像を手に入れつつ、棲処にいるクリーチャーに対処し、侵入者を追いかけるドラコリッチから逃れなくてはならない。英雄たちは魔法の防護を潜り抜け、ダイアモンド・スタッフの間に入り込み、ドラコリッチやその下僕に抹殺される前にスタッフを奪還するのだ。
 

D&Dエンカウンターズとの接続/Connections to D&D Encounters
 この冒険の出来事は2013/6/19に開始される、D&Dエンカウンターズ『ダイヤモンド・スタッフを求めて』に続いている。プレイヤーはこの冒険を切り抜けたキャラクターをD&Dネクスト版『ダイヤモンド・スタッフを求めて』に登場させることができる。キャラクターはこの冒険で得られた経験点をすべて得、また魔法のアイテムの中から1つを持ち込むことができる。


 

ドレトクロヤステルの棲処/Dretchroyaster’s Lair

 ドラコリッチの棲処は4つの区画 - ベハル神の忘れられた神殿、地底湖、トログロダイトの村、ドレトクロヤステルの宝物庫 - から成り立っている。ザ・ダイアモンド・スタッフ・オヴ・ホミルラは、これらの区画が接続される中央の部屋に安置されている。
 それぞれの区画の解説は斜字体で記されており、キャラクターがその場所に侵入した時点でどのようなことを感じたかを記しているものであるため、キャラクターがその区画に侵入したならプレイヤーに読むか言い換えろ。君はキャラクターの侵入個所と侵攻方向により情報を修正する必要があるだろう。
 

ベハル神の忘れられた神殿/Forgotten Temple of Bhaal

地底湖/Underground Lake

トログロダイトの村/Troglodyte Village

ドレトクロヤステルの宝物庫/Dretchroyaster’s Vaults

 

冒険の結末/Concluding the Adventure

 残る時間の量によって、イベント調整士は冒険者が棲処から逃走できるかを決定する。このシナリオはキャラクターに対し、ドラコリッチとその手先から劇的な脱出劇を演出することができる。イマーニは棲処の外でテレポーテーション・サークルを起動して、キャラクターをハップ村/village Hapに送り届けられるように待機している。

 もし時間が不足するなら、ドレトクロヤステルからの逃走劇は割愛し、パーティはザ・ダイアモンド・スタッフ・オヴ・ホミルラをイマーニに届けて勝利をつかんだものとして進めろ。成功した勇者は、勝利を祝うウィザードの歓迎を受ける。

「友よ! 君は悪の手中から強力なアーティファクトを奪還し、恐るべき脅威から我らの大地を救ってくれたのだ。だが、我らは慎重にしなくてはならない。ドラコリッチとドラゴン・カルトは間違いなく、ウヴァイレンの失われた宝物庫を探すため、スタッフを再奪還しようとするだろう - さらに我らのドレトクロヤステルに対する勝利は、このアーティファクトを狙う他の者たちをも引きつけるだろう。」
「さりとて、今日のところは我らの勝利だ。祝杯を挙げよう!」

 来るD&Dエンカウンターズの新シーズン『ダイヤモンド・スタッフを求めて』が6月19日に始まるが、そこでプレイヤーは彼女らのキャラクターに報酬経験点500を得ることができる。キャラクターは魔法のアイテム1つと彼女らが冒険で得た財産/wealth(非魔法アイテム)を持ち込むことができる。
 

マスカレード・ホテル

 東野圭吾


 警察とホテルマンという2つの職業の姿を描いた作品。
 人間ドラマや職業ドラマとしてはなかなか魅せてくれるが、犯罪自体の謎に関してはいささか稚拙で、謎自体ではなくセリフで押し切ってるところがあり残念。
 まあ、そこはフレーバーってこったな (ΦωΦ)

 伏線をちゃんと回収する努力に敬服。

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ザ・ザナサー ウォーターディープのビホルダー犯罪王/The Xanathar, Beholder Crime Lord of Waterdeep 201209 ダンジョン誌 206号

「ザ・ザナサーが実在するかどうかなんて知らんよ。でも俺がウォーターディープで働いていると分け前に与れるのは確かだ。なんで無意味な詮索をしなきゃいけないんだい?」

- こそ泥のターマリン/Termerin, cat burglar
 
 「ザナサー(またはしばしば「ザ・ザナサー」)」という名前は1世紀以上もの間、ウォーターディープの闇の中で囁かれている。ザ・ザナサーのギルドの悪名高い指導者の素生は一度も明らかになったことはなく、市内で活動するローグ、シーフ、巾着切り、密輸商人等は一様にそのような人物はいないと断言する。

 多くの人々は、ザ・ザナサーというのは庶民に恐怖を叩きこむための架空の悪漢であると信じている。1人の個人が、ウォーターディープの盗賊ギルドという巨大で複雑な組織を、長期間に渡って運営するのは不可能であると考えられているからだ。結局のところ、ザ・ザナサーの物語は100年以上昔から続いている。おそらくは、過去に犯罪王は実在したが、常識的な範囲で考えて彼は既に死んでいるのだろう。
 

奇妙な継承譚/Strange Succession

 ザ・ザナサーは実在する。そしてウォーターディープにおける最も堅く守られた秘密の1つは、ザ・ザナサーのギルドの頭目ビホルダーであるということだ。多くのビホルダーが、ギルドの長い歴史の間でザナサーの地位を襲名した:現在の襲名者は13年前からその地位にある。

 ザナサーはギルドを運営した最初のビホルダーの本名だった。後にウォーターディープの暗黒街で勢力を伸ばしたが、他のビホルダーの癇に触れてしまった。ザナサーは“御目/The Eye”と呼ばれるライバルに暗殺され、秘密裏にその地位を襲われた。“御目”が冒険者によって殺された後、3番目のビホルダーがその地位を襲った。

 数年の間に多くのビホルダーがザナサーの称号を襲った。ある者は前任者を抹殺し、ある者は平和裏に継承した。エルダー・ビホルダーのザンダルツリスラル/Xandulzrithral は後者に含まれる。彼は標的として生きるより退任することを選んだ。混乱を助長したのは、ウォーターディープには他にもビホルダーが住んでおり、彼らはザ・ザナサーのギルドと何の関係もないにもかかわらず、その活動がザナサーの仕業と混同されることだった。そのようなライバルの1体がロスジョウズ/Lothjawsとして知られるズロロスズラウ/Xlorothxrauだ。ザナサーを継承したビホルダーは、他人の仕事が自分の仕事のように語られることを非常に喜んだ。

 前回のザナサー(以前の名はアイザルクター/Izulktur)が地位を得たのは短期間だった。それは元々4つの種族からなるビホルダー集団の1体だった。ザナサーの地位に就いた後も、アイザルクターは魔法を使って元の集団と接触を続け、ウォーターディープにおける進捗や情勢をやり取りしていた。最終的にそのクリーチャーは飽きた。ビホルダーは長期間ねぐらに閉じ込められ、自分を隠し続けることが嫌になったのだ。ザナサーは集団に交代を送るよう依頼した。集団は下僕であるカルディア/Kal'dirという名前のドラウをウォーターディープに送り込み、継承を手伝わせた。

 カルディアは集団の新顔であるザシャクスズ/Zushaxxが、ザナサーの継承に興味を持っていることを伝えた。ザシャクスズがウォーターディープの根城に来るまでに、アイザルクターはカルディアを信頼して様々な秘密を打ち明けた。ドラウには継承中にザシャクスズを助け、その後も新たな指導者に仕えるようにと指示が下された。集団はドラウの家族を殺した者たちに対し報復を行うことでカルディアの忠誠に報いた。

 ザシャクスズに交代した後、カルディアを除きギルドの上級幹部と代行者たちは一新された。ドラウは人選に関して役立つ補佐だった。ザシャクスズはザナサーとしての初年を、前任者たちの集めた膨大な書庫を読み通すことで過ごした。無数の情報に触れたそれは、飢えるようにより多くの情報を求めるようになった。

 現在のザナサーは若く意欲的で、前任者たちより衝動的だ。ギルド指導者はその力を増大させる好機を逃さない。彼は信用できる十分な数の副官が揃ったなら、影の世界から飛び出し、昂然とその正体がビホルダーであること示すべきと考えている。

 ゲームにおいて:もし君がザナサーのデータを求めるなら、君はモンスター・ヴォールトのビホルダーのデータを用いることができる。
 

側近たち/The Inner Circle

カルディア/Kal’dir

噛みタバコ/Quid

サイアル・サファイアSial Sapphire

ドラーク/Draak

ギルドの方針/Guild Politics

ザナサーの棲処/Xanathar's Lairs

赤の棲処/Red Lair

青の棲処/Blue Lair

紫の棲処/Purple Lair

隠し書庫/Hidden Library

冒険フック/Adventure Hooks

アリータ バトル・エンジェル

 原作未読


 銃夢の実写映画化。話はだれることなくテンポよく進み面白い。
 どこまでが原作準拠で、どこからがオリジナルかはわからないが、底辺出世モノとしては定番の流れで作られており、本国では受容度が高そう。
 日本だとどうだろ? (ΦωΦ)

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エンカウンターズ17 レッド・ウィザードの野望:ソード・コーストの受難/Dreams of the Red Wizards, Scourge of the Sword Coast D&D Next 20140219

DR1486

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背景/Background

 この冒険は『ドラゴンスピア城の亡霊』の出来事の後のダガーフォードを取り上げる。レッド・ウィザードによる一連の策謀を描いた4つの冒険は、"邪悪なる元素大公"を奉じる廃寺院に、元素ノードのパワーを解放する4つの鍵を集めることにあった。
 『ドラゴンスピア城の亡霊』において、キャラクターはダガーフォード近傍でレッド・ウィザード他の脅威と対峙した。彼女らはまたレッド・ウィザードの計画を挫かんとする勢力の中心にいたアイスティヴァル卿を始め、この冒険の特徴である多くのNPCとも邂逅している。もし君が『ドラゴンスピア城の亡霊』をプレイした同じグループで『ソード・コーストの受難』をプレイするなら、君はそれらのイベントについて調整しても良い。
 『ドラゴンスピア城の亡霊』において、しばらくの間であったが噴煙とデヴィルを噴き出す九層地獄へのゲートが開いた。ゲートを封じた勇者にはそれを知るよしもなかったが、戦闘の混乱のさなかに1つの脅威が出現していた。この不可視の存在は、長年に渡ってソード・コーストで計略を練り続けていたピット・フィーンドの“エッセンス”だ。そのデヴィルはバァツカ/Baazkaという名で、かつてドラゴンスピア城の軍勢を率いており、テンパスの僧侶の手でイリドリイル/Illydrael - ゲートを封印する焦点として機能する剣 - で心臓を貫かれたのだ*1
 貫かれたのが頭部でなく心臓であったため、バァツカはゲートをくぐって逃走した。しかし刀身は砕け、彼の体内に残留した。もしこの世界での一撃が彼を抹殺していたなら、デヴィルは復讐のために1世紀後には帰還していただろう。もし九層地獄で彼が抹殺されたなら、バァツカは存在を終えただろう。しかしながら、ピット・フィーンドの暗黒の心臓は刀身を覆って鼓動を続けた。砕けた刀身を除去することが破滅を意味すると考えたバァツカは、九層地獄で苦悶の日々を送った。1拍の鼓動と共に襲う苦痛が、彼の復讐心を掻き立てた。
 同期した魔法の影響で、バァツカはゲートがイリドリイルによって閉じられたままでいる限りフェイルーンに入ることができなかった。ゲートが開いた途端、彼は霊体としてそこを通過することができた。この状態のまま、ピット・フィーンドはメネクという名前のレッド・ウィザードを見つけ、憑依しようとして失敗した。これに気付いたメネクは主たるザス・タムに報告した。現在バァツカは、彼の呪われて苦痛に満ちた状態から解放するというザス・タムとの契約に基づき、レッド・ウィザードと行動を共にしている。
 『ドラゴンスピア城の亡霊』の出来事は、ソード・コーストをフェイルーン北西部におけるサーイ支配の橋頭堡に変えるという、ザス・タムの案を失敗に終わらせた。この結果としてレッド・ウィザードの計画は、より巧妙さを突き詰めるように変化していった。
 放棄された元素寺院の廃墟に、サーイ人はブラッドゲート砦と呼ぶ秘密の拠点を建設した。小要塞は落丘/Forlorn Hillsの僻地にあり、詮索好きな目を遠ざける程度には遠く、サーイ人究極の目的であるウォーターディープを攻撃範囲に収められる距離にあった。要塞はリッチのタラル・ヴァーの指揮下にあり、そこでレッド・ウィザードはサーイからソード・コーストまで、軍勢を移動させるための魔法のゲートを構築した。彼らはバァツカの影響下にあるゴールド・エルフ、シャレンドラ・フロシンを利用し、ゲートとポータル網の接続を計画している。
 真の目標から近隣住民の気を逸らし、将来的な抵抗を軟弱なものとするため、レッド・ウィザードはバァツカを利用して悪の人型生物に対してザス・タム陣営に加わるように説得した。レッド・ウィザードの魔法ゲートが完成間近となった時点で、血に飢えた人型生物がダガーフォード地域の街道を襲い、恐慌と混乱が発生した。ほとんど毎日襲撃の報告がダガーフォードに到着して程なく、死に物狂いの難民の集団が殺到してきた。
 ダガーフォードはすべての難民を迎え入れることができるわけではない。さらに悪いことに、ペンチェスカ - タラル・ヴァーの奴隷サキュバス - が、町にさらなる混沌をぶちまけようと暗躍していた。彼女の行動は今までのところ、何の抵抗にも遭っていない。レッド・ウィザードの目的は明らかになっていないが、それを明らかにするため、また近隣地域への侵略行為を止めるため、ダガーフォードが英雄を必要としているのは明白だった。
 

冒険の要約/Adventure Synopsis

 冒険者ダガーフォードに到着した時、周囲は辺境から逃れてきた難民でごった返していた。ゴブリン、ノール、そしてオークが周辺地域を襲撃したのだ。現在、食料品は欠乏しており、緊張は高まっている。難民の間では盗みが横行し、ダガーフォード公爵は難民に対して正式に街への出入りを禁じた。
 まずダガーフォードに入るという難関を克服した後、キャラクターは襲撃について多くを知る。彼女らが人型生物と戦い、そしてダガーフォードを取り囲む暗闇への探求を続けるうち、キャラクターはブラッドゲート砦の存在を知る。最後の悪魔のような不意打ちを凌いだ後、彼女らはその地域を襲う真の脅威と対峙するだろう。
 

冒険の始まり/Starting the Adventure

 この冒険におけるキャラクターは、ダガーフォードのアイスティヴァル卿に英雄的か金銭的な用向きで呼び出され、ウォーターディープからダガーフォードに向かう隊商に同行していると想定している。プレイヤーは別の行動を考えているかもしれない。(すべてのキャラクターが同じ理由で動く必要はない。)君はアイスティヴァル卿について説明しても良いし、すでに知っているものとして処理しても良い。
 君に始める準備ができたなら、以下を読め:
 

 隊商がダガーフォードまであと一日の距離に近づいたころ、君たちは焼け出された農民と庶民から成る難民の集団を通り過ぎた。皆はノールやオーク、ゴブリンといった、野蛮な人型生物による執拗な襲撃が、広範囲に渡って行われたと語った。隊商が交易路沿いに南下するにつれ、遺棄された炎を上げる農場と村落が目に入って来た。街道周辺のこのありさまは、ノールやゴブリンの存在を示唆している。
 その晩隊商は、ある農場の道を挟んだ東の空き地で輪形陣を描いて宿泊した。そこに生命は存在しなかった。部分的に掘り返された畑では、案山子が傾いで立っていた。木柵はところどころ破壊されていた。家と納屋の扉は開きっぱなしだった。

 

展開/Development:

 プレイヤーに彼女らのキャラクターを紹介させろ。キャラクターが農場に行くか、あるいは夜半を過ぎるまで、重要なことは何も起きない。
 

糸口/Clues:

 農場は略奪されている。若干の食料品とエールだけが残されている。他の手掛かりとして、長い矢、血まみれの牙、切断されたウルフの足首がある。この証拠から、難易度10の【知力】(〈歴史〉か〈自然〉)判定に成功することで、ノールとの関連が思い至る。追跡に長けたキャラクターは、最終的に2日前、ノールが北方から襲撃したことを知る。
 

クリーチャー/Creatures:

 夜半に、6体のゴブリンと1体のゴブリンのかしらが、2体の鞍袋を付けたウルフと共に、農場の貯蔵品目当てにやってくる。もし誰も農場にいないなら、彼らは面白半分にそこを略奪し始める。難易度10の【判断力】(〈知覚〉)判定に成功することで、隊商とともにいるキャラクターは、陶磁器や木柵の壊れる音を聞き、案山子が燃やされる光景を見つける。隊商の警護員は厳重な監視を続けるが、ゴブリンは街道まではやってこない。そのため隊商のNPCは、農場で何が起きても調査に行かない。

*1:訳注:この背景の出典はDR1363に勃発した第二次ドラゴンスピア戦役にあり、1992年の2版冒険『ドラゴンスピア城の軍勢/Hordes of Dragonspear』で語られる。