サマーウォーズ

  元気玉


  最近の低廉アニメにありがちな、萌えとか露出に逃げない、正統的な映画。
  普通に面白い。
  公開3週間の映画が、レイトとはいえ座席が8割埋まっており、エンドロールが終わるまでほとんど誰も立たないという事実がこの作品の完成度を語っている。




  作品の内容は割愛するが、作中では“単一ネットワーク”の危険/脆弱性が語られている。
  ライフラインも軍事技術もなにもかもネットワークに接続されているというところがなんだが、実際にこれに近いことは行なわれているのかもしれない。
  米国のエシェロンなんてこれの廉価版みたいなもんだし。


  またデジタル対アナログという図式も語られているが、ネットワーク上では絶対無敵の存在も、確率論で構成されるアナログ・ゲームで対等に勝負できるという発想は悪くない。
  もっとも、AIが知識欲の権化ではなく何が何でも勝利を求めるタイプであるなら、ゲーム・プログラムを書き換えられて人間が敗北しただろうが (;^ω^)
  この辺の正々堂々とした態度は『ウォー・ゲーム』を思い出す。




  人間がこういうネットワーク世界を指向する理由がなんとなくわかるね。
  要は“神”になりたいのだ(悪い意味でなく
  我々人間は、如何に文明が進歩しようと、物理法則を超える事ができない。どんなに素早く腕で羽ばたいたって空は飛べないし、持ち上げたものを手放せば地に落ちる。異言語と会話するにはスキルを磨かなくてはならず、遠くに行くには労苦を積まなくてはならない。
  しかしこういったネットワーク世界なら、設定者はパラメーターを変更するだけで物理法則を超える事が出来る。簡単に空は飛べるし、言語の壁を越えられるし、距離の概念すら無用だ。
  不自由な物理空間より、想像の世界の方が便利なのはゼンゼンシティのころから知られているしね。




  なんにせよ良作。興味のある方は観た方がよろしい。


  ああ、萌えとか俺Tueeeeee!!! とか、最近の作風にありがちな裏づけのないはったりが好きな人には向かない。
  一般人の感性を持てない人はやめとこう。



製作総指揮 奥田誠治
製作 高橋望、伊藤卓哉、渡辺隆史、齋藤優一郎
原案  
脚本 奥寺佐渡
監督 細田守