『指輪物語』の好きなシーン3

 奥方は片手を高くあげました。するとその手にはめた指輪から強い光が発せられて、彼女一人を明るく照らし出し、あとのものを暗いままに残しました。フロドの前に立つ彼女の姿は今や測りがたいほど高く、耐えがたいほど美しく、戦慄すべき恐ろしさとともに、あがむべき尊厳さを備えていました。やがて奥方はその手を下しました。光は消え失せました。そして不意に奥方はふたたび声をあげて笑いました。すると、どうでしょう! 奥方の背丈はたちまち縮まって、簡素な白の衣装を身にまとった、もとのたおやかなエルフの貴女に戻っていました。そのおだやかな声はやさしく悲しげでした。
 「わらわは試練に耐えましたね。」と、奥方はいいました。「わらわは小さくなることにしましょう。そして西へ去って、いつまでもガラドリエルのままでいましょう。」

『旅の仲間、下巻』289ページ