ベクシル 2077 日本鎖国

 微妙。


 いわゆるところのSF映画で未来ifモノ(という区分けがあるかは知らない)
 オールCGを前面に押し出した映画はアップル・シードとかもあったので世界初と言うわけでもないが、この手のFF系ムービーに慣れている人には感動モノなのかもしれない。ムービーの出来自体は悪くないから。


 ただ設定がいまいちと言うか運用(脚本)がなんと言うか。
 こまかいアラと言えばアラだが、最初の突入時のジェット・スーツ(強化服のこと)の腕は運動エネルギーを無視しているとか、建物を砕いたアレは剛体で出来ているの? とか物理法則が無視されすぎ。まあここは「アニメだし」で流してもいいかもしれない。小型の自動メカはアイデアとして面白いし。
 しかしベクシルはじめ米国特殊部隊SWORDの面々の動きが素人過ぎ。脚本上殺す必要があるとしても、遮蔽も何もない通路の真ん中で銃撃戦とか曲がり角を何も調べず飛び出すとか死んで当然な行動が頻出。これはダメだろう。チンピラが虐殺されるシーンを描いたのならともかく。
 あと某キャラがなぜ「○○のお気に入り」なのか描写なし。その○○も登場せず。一連の行為が実験と言うのまではマッドな感じで良しなのだが、それを達成した過程が描かれていないので未消化 *1。サイトーくんの怒った理由も反応もいまいち *2。ラストに出て来るあれもどうよ…、状況的にありえナス。


 全体的に言えるのは物語がイメージ優先で作られていて、シメを担当する人間の不在が散見される。だれか冷静に見る人がいれば簡単に直せる程度のことなのに。最新鋭の機械のお披露目で塗装の塗り残しやオイル汚れを見つけたようなバツの悪さを感じる大作ですた。
 アニメだからそんなの忘れろと言う声もあろうが、「映画にするんだから、徹底的にそこまで凝れよ」とか言いたい。


 ひとつ言えるのは、人間観察不足 *3実体験不足 *4 が酷すぎる。セルアニメを支えていた職人たちがCG使えるようになれば良いのにね。


 日本のアニメはセル時代を超えてCG時代になってから世界一のテクノロジーに達したけど、テクニックに関しては白紙に戻ったという感じ。
 あと10年もしたら一般人に自慢できる映画が作られるようになるかもね*5
 結論:FF系ムービー好きは見とけ


 オチがグダグダなのは脚本がダメな証拠だが、ふと思ったのはこれはハリウッドと同じ現象なのではないか?
 ハリウッドはグダグダなオチを愛とロマンスに無理矢理置き換えて映画を締めるけど、日本はそういうオチに持っていくことに抵抗があるためグダグダなまま終わるのかもしれない。
 グダグダオチは迷走する米帝*6 を無意識下で表しているのかもしれない。製作者はこの国の住民なんだし。

*1:ひょっとして完全にマッドの単独行動だったのだろうか?

*2:サイトーくん、実はアンチだったとか? 復讐としてはあの場で注射を刺すのが一番効いたろうに

*3:人間はあんな動きをしない。メイン・キャラの動きとかじゃなく、背景として描かれた時の細かいしぐさやモブが不自然なリピートになっている。こんなのCG屋を2、3日くらいオープンカフェに座らせて周囲の人を見せておけば解消出来そうなものなのに

*4:ガラスが割れるシーンだって、本物のガラスが割れるのを見たことがなきゃリアルには描けない。そういう現実の細かい積み重ねがCGにリアルさを生むのだとしたらCG屋に積み重ねがなさすぎ。もっといろいろ現実を見せてCG屋の脳内を更新した方が良いな。アニメばかり見ているやつは使えないを地で行ってるような

*5:全世界のアニオタはこの作品でも絶賛するだろうけど、そんなお手盛り礼賛に何の意味があるのやら

*6:日本は当然属国w