デミリッチ/Demi-lich:1982『S4 ツォーカントの“失われた大洞窟”』巻末資料より

The Lost Caverns of Tsojcanth (Advanced Dungeons & Dragons Module S4)

The Lost Caverns of Tsojcanth (Advanced Dungeons & Dragons Module S4)


ヒューマンの生命だけが陥る…


 途轍もなく悪いヒューマンのマジックユーザーかクレリックは、自然の寿命をはるかに超えて存在し続けるために秘中の秘術を用いる。このクリーチャーこそがリッチであり、それは数世紀間に渡り存在し続ける。


 究極的には、その生命力もやがて衰退する。リッチの姿形は朽ち果て、その悪しき魂は最も賢明なる賢者にすら知られていない奇妙な次元界を彷徨うことになる。残った力をデミリッチと呼ぶ。“デミリッチ/半リッチ”は紛らわしい名だ。それを聞いた者は、その力が衰退したクリーチャーと考えるかもしれない。その用語はリッチの身体的状態について言及したものだ。つまり、かつてリッチの肉体だった一部 - 塵埃、頭蓋骨、数本の骨 - のみが残存しているからだ。


 もしデミリッチのもとに踏み込んだなら、それはおよそ人型をした渦巻くダスト(塵埃)として舞い上がる。デミリッチはいずれの形態であってもアンデッド退散させることはできない。もしダスト形態を無視するなら、それは3ラウンド後に消失する。それは危害を与えるための姿ではなく、脅し、恐怖を煽るためのものだからだ。


 ダスト形態に対して攻撃するなら、それは力を増していく。ダスト形態が攻撃を受けたなら、75%の確率でレイスの能力を得る。さらなる攻撃はクリーチャーに追加ヒット・ポイントを与える。攻撃が物理であっても呪文であっても傷つけることはできないが、それは傷ついているかのように揺らぎ後退しつつヒット・ポイントをため込んでいく。それは1ヒット・ポイントから始まり、物理攻撃を受ける毎に1ヒット・ポイント得て、さらにそれに向けて発動された呪文のレベルに等しい値のヒット・ポイントを得る(3レベル呪文であるなら3ヒット・ポイント)。50ヒット・ポイントを貯めた時点で、ダスト形態はデミリッチの精神が制御するゴースト形態(50ヒット・ポイント)にと変化する。ゴースト形態は即座に攻撃を開始する。


 もしクリーチャーが愚かしくもデミリッチの頭蓋骨に接触したなら恐ろしいことが起こる。デミリッチがダスト形態かゴースト形態のいずれであっても、これらの形態は即座に消失する。頭蓋骨はレヴィテートされたように空中に舞い上がり、パーティの中で最も強い者に対して攻撃を開始する。


 デミリッチにとっての「最も強い」とは、通常はマジックユーザー、続いてファイター、クレリック、シーフ、モンクの順であり、その順に従い攻撃を行なう。デミリッチは2つの方法で攻撃を行う(それぞれ50%の確率)。1つは“咆哮”で、20フィート以内に位置する存在は対死セーヴに失敗したなら即死する。もう1つは1体の対抗者の“生命力吸引”(DDGp10)だ。この攻撃の犠牲者はセーヴィング・スローを行なえない。犠牲者の生命力は特別な宝石の中に束縛される。デミリッチは頭蓋骨の眼窩や歯にこのような宝石を2d4個持っている。犠牲者の肉体は崩壊して悪臭を放つ腐肉に変じ、1ラウンドで朽ちて消える。その後、満足した頭蓋骨は床上に降りる。もし再び攻撃を受けるか接触されたならそれは浮き上がり、“咆哮”か2番目に強いパーティ・メンバーに“生命力吸引”を行なう。この工程は頭蓋骨が攻撃されるか破壊されるまで繰り返される。


 頭蓋骨の宝石すべてに生命力が満たされたなら、デミリッチは残った対抗者に対して1回の“呪詛”を発することができる。この“呪詛”は極めて強力だ:

  • a) 敵の武器が常に命中するようになる
  • b) 決してセーヴィング・スローを行えなくなる
  • c) 決して経験点を得られなくなる

 デミリッチの“呪詛”はリムーヴ・カース呪文によって除去できるが、“呪詛”を受けたキャラクターの【魅力】は恒久的に2減少する。


 デミリッチの頭蓋骨は次の方法でのみダメージを与えることができる:

  • 1回のフォーゲットforget呪文かエクソーシズムexorcism呪文を発動することにより、頭蓋骨は“咆哮”や“生命力吸収”を使用せずに床に降りる。それに対してシャタ―呪文を発動することによりヒット・ポイントに10ダメージを与えることができる。
  • アストラル状態かイセリアル状態のマジックユーザーが発動する1回のパワー・ワード・キルにより頭蓋骨を破壊することができる。
  • ヴォーパル武器を持つファイター:ソード・オヴ・シャープネス、+5ソード、ヴォーパル武器を持つレンジャー;ソード・オヴ・シャープネス、ヴォーパル武器、+4以上のソードを持つパラディンなら頭蓋骨にダメージを与えることができる。
  • 1回のディスペル・イーヴル呪文を発動することによりヒット・ポイントに5ポイントのダメージを与えることができる。
  • 1回のホーリィ・ワード呪文を発することによりヒット・ポイントに20ポイントのダメージを与えることができる。


 デミリッチの頭蓋骨はAC-6で50のヒット・ポイントを持つ。もしデミリッチを破壊したなら、残った塵埃や骨片等の残存物にホーリィ・ウォーター/聖水を撒いて完全に破壊しなくてはならない。そのようにしないのであれば、クリーチャーは1d10日後に再起する。


 もし頭蓋骨を破壊したなら、宝石に生命力を捕らわれたキャラクターはそれぞれ対呪文セーヴィング・スローを行なわなくてはならない。セーヴィング・スローに失敗したなら、デミリッチが破壊される前に宝石内の生命力はむさぼり食われ、生命力は失われる。セーヴに成功した宝石にはキャラクターの生命力が残されている。生命力を含む宝石は内部から微光が放たれる。もしトゥルー・シーイング、トゥルー・サイトtrue sight、またはジェム・オヴ・シーイングで観察するなら、宝石の内部にはごく小さな人型が見られる。宝石を砕くことで魂は解放されるが、10フィート以内にそれを受け取るための肉体 - クローン、シミュレイクラム、または他の死体等 - がなくてはならない。