DR1486
背景/Background
この冒険は『ドラゴンスピア城の亡霊』の出来事の後のダガーフォードを取り上げる。レッド・ウィザードによる一連の策謀を描いた4つの冒険は、"邪悪なる元素大公"を奉じる廃寺院に、元素ノードのパワーを解放する4つの鍵を集めることにあった。
『ドラゴンスピア城の亡霊』において、キャラクターはダガーフォード近傍でレッド・ウィザード他の脅威と対峙した。彼女らはまたレッド・ウィザードの計画を挫かんとする勢力の中心にいたアイスティヴァル卿を始め、この冒険の特徴である多くのNPCとも邂逅している。もし君が『ドラゴンスピア城の亡霊』をプレイした同じグループで『ソード・コーストの受難』をプレイするなら、君はそれらのイベントについて調整しても良い。
『ドラゴンスピア城の亡霊』において、しばらくの間であったが噴煙とデヴィルを噴き出す九層地獄へのゲートが開いた。ゲートを封じた勇者にはそれを知るよしもなかったが、戦闘の混乱のさなかに1つの脅威が出現していた。この不可視の存在は、長年に渡ってソード・コーストで計略を練り続けていたピット・フィーンドの“エッセンス”だ。そのデヴィルはバァツカ/Baazkaという名で、かつてドラゴンスピア城の軍勢を率いており、テンパスの僧侶の手でイリドリイル/Illydrael - ゲートを封印する焦点として機能する剣 - で心臓を貫かれたのだ*1。
貫かれたのが頭部でなく心臓であったため、バァツカはゲートをくぐって逃走した。しかし刀身は砕け、彼の体内に残留した。もしこの世界での一撃が彼を抹殺していたなら、デヴィルは復讐のために1世紀後には帰還していただろう。もし九層地獄で彼が抹殺されたなら、バァツカは存在を終えただろう。しかしながら、ピット・フィーンドの暗黒の心臓は刀身を覆って鼓動を続けた。砕けた刀身を除去することが破滅を意味すると考えたバァツカは、九層地獄で苦悶の日々を送った。1拍の鼓動と共に襲う苦痛が、彼の復讐心を掻き立てた。
同期した魔法の影響で、バァツカはゲートがイリドリイルによって閉じられたままでいる限りフェイルーンに入ることができなかった。ゲートが開いた途端、彼は霊体としてそこを通過することができた。この状態のまま、ピット・フィーンドはメネクという名前のレッド・ウィザードを見つけ、憑依しようとして失敗した。これに気付いたメネクは主たるザス・タムに報告した。現在バァツカは、彼の呪われて苦痛に満ちた状態から解放するというザス・タムとの契約に基づき、レッド・ウィザードと行動を共にしている。
『ドラゴンスピア城の亡霊』の出来事は、ソード・コーストをフェイルーン北西部におけるサーイ支配の橋頭堡に変えるという、ザス・タムの案を失敗に終わらせた。この結果としてレッド・ウィザードの計画は、より巧妙さを突き詰めるように変化していった。
放棄された元素寺院の廃墟に、サーイ人はブラッドゲート砦と呼ぶ秘密の拠点を建設した。小要塞は落丘/Forlorn Hillsの僻地にあり、詮索好きな目を遠ざける程度には遠く、サーイ人究極の目的であるウォーターディープを攻撃範囲に収められる距離にあった。要塞はリッチのタラル・ヴァーの指揮下にあり、そこでレッド・ウィザードはサーイからソード・コーストまで、軍勢を移動させるための魔法のゲートを構築した。彼らはバァツカの影響下にあるゴールド・エルフ、シャレンドラ・フロシンを利用し、ゲートとポータル網の接続を計画している。
真の目標から近隣住民の気を逸らし、将来的な抵抗を軟弱なものとするため、レッド・ウィザードはバァツカを利用して悪の人型生物に対してザス・タム陣営に加わるように説得した。レッド・ウィザードの魔法ゲートが完成間近となった時点で、血に飢えた人型生物がダガーフォード地域の街道を襲い、恐慌と混乱が発生した。ほとんど毎日襲撃の報告がダガーフォードに到着して程なく、死に物狂いの難民の集団が殺到してきた。
ダガーフォードはすべての難民を迎え入れることができるわけではない。さらに悪いことに、ペンチェスカ - タラル・ヴァーの奴隷サキュバス - が、町にさらなる混沌をぶちまけようと暗躍していた。彼女の行動は今までのところ、何の抵抗にも遭っていない。レッド・ウィザードの目的は明らかになっていないが、それを明らかにするため、また近隣地域への侵略行為を止めるため、ダガーフォードが英雄を必要としているのは明白だった。
冒険の要約/Adventure Synopsis
冒険者がダガーフォードに到着した時、周囲は辺境から逃れてきた難民でごった返していた。ゴブリン、ノール、そしてオークが周辺地域を襲撃したのだ。現在、食料品は欠乏しており、緊張は高まっている。難民の間では盗みが横行し、ダガーフォード公爵は難民に対して正式に街への出入りを禁じた。
まずダガーフォードに入るという難関を克服した後、キャラクターは襲撃について多くを知る。彼女らが人型生物と戦い、そしてダガーフォードを取り囲む暗闇への探求を続けるうち、キャラクターはブラッドゲート砦の存在を知る。最後の悪魔のような不意打ちを凌いだ後、彼女らはその地域を襲う真の脅威と対峙するだろう。
冒険の始まり/Starting the Adventure
この冒険におけるキャラクターは、ダガーフォードのアイスティヴァル卿に英雄的か金銭的な用向きで呼び出され、ウォーターディープからダガーフォードに向かう隊商に同行していると想定している。プレイヤーは別の行動を考えているかもしれない。(すべてのキャラクターが同じ理由で動く必要はない。)君はアイスティヴァル卿について説明しても良いし、すでに知っているものとして処理しても良い。
君に始める準備ができたなら、以下を読め:
隊商がダガーフォードまであと一日の距離に近づいたころ、君たちは焼け出された農民と庶民から成る難民の集団を通り過ぎた。皆はノールやオーク、ゴブリンといった、野蛮な人型生物による執拗な襲撃が、広範囲に渡って行われたと語った。隊商が交易路沿いに南下するにつれ、遺棄された炎を上げる農場と村落が目に入って来た。街道周辺のこのありさまは、ノールやゴブリンの存在を示唆している。
その晩隊商は、ある農場の道を挟んだ東の空き地で輪形陣を描いて宿泊した。そこに生命は存在しなかった。部分的に掘り返された畑では、案山子が傾いで立っていた。木柵はところどころ破壊されていた。家と納屋の扉は開きっぱなしだった。
糸口/Clues:
農場は略奪されている。若干の食料品とエールだけが残されている。他の手掛かりとして、長い矢、血まみれの牙、切断されたウルフの足首がある。この証拠から、難易度10の【知力】(〈歴史〉か〈自然〉)判定に成功することで、ノールとの関連が思い至る。追跡に長けたキャラクターは、最終的に2日前、ノールが北方から襲撃したことを知る。
*1:訳注:この背景の出典はDR1363に勃発した第二次ドラゴンスピア戦役にあり、1992年の2版冒険『ドラゴンスピア城の軍勢/Hordes of Dragonspear』で語られる。