白羽山の迷宮、再び/Return to White Plume Mountain AD&D2nd 1999 その1

裏表紙

不滅性への飽くなき追求が、桁外れの脅威を引き起こす!

 いにしえの時代、ケラプティスという名前のソーサラーが永遠の生命を求めた。活火山のマグマ・ドームと水蒸気道の中で彼は秘術的実験を追求した。最終的に彼は伝説の中に消え去った。そして世界は一千年以上もの間ケラプティスについて耳にすることはなかった。

 しかしながら、20年前ケラプティスが“白羽”に現われた。その山に君臨する狂える君主はその力を遺憾なく発揮した。しかし最終的に勇気と正義に屈した。ケラプティスは遂に死んだ…、世界はそう結論した。

 あれから20年の時が流れた。現在、火山の噴煙にひとつの顔が浮かび上がった - あれはケラプティスの顔であると人々は口にした。猛悪なるウィザードは結局のところ不滅性を得たのだろうか? または“白羽山”の地中にはより危険な脅威が存在するのだろうか?

 ローレンス・シックによる最初の『S2:白羽山の迷宮』は1979年に発表されたAD&Dゲーム最初期シナリオの1つだった。もし君がその火山の冒険に楽しい思い出を持っているなら、君はこの冒険を以前のものより危険で魅力的なものと感じるだろう。もし君が初めて“白羽山”に挑むのならこれは決して忘れられない経験となるだろう。

 これは7-10レベルのキャラクター4-10人向けに作られている。
 

概要/Introduction

「彼は火口の下にもつれるように複雑な火山性坑道を発見した。彼とノームたちは間欠泉の影に消えた。その後、人々は悪しきウィザードの話を耳にしなくなった。」

ケラプティスの伝説、『S2:白羽山の迷宮』より
 
 ローレンス・シックによる『S2:白羽山の迷宮』は、D&Dの拡大期に発表された。この冒険は最初期に記されたシナリオのひとつであり、大勢のD&Dファンがこれを購入してプレイした。その結果『白羽山の迷宮』は長い間、その時代におけるDMとプレイヤーたちの間の“共通体験”として語り継がれることになった。君が火山にまつわる楽しい思い出を持つのか、それとも初めて『白羽山の迷宮』と立ち向かうかはわからないが、この続編はこの後も語り継がれる無数の新キャンペーンの礎石となるだろう。
 

この冒険の使い方/Using This Adventure

 このAD&D冒険は、7から10レベルのPC4人から10人向けに設計されている。一行のキャラクター・レベル合計は45以下にすべきだが、低レベル・キャラクターの集団で山に挑むと生還すら覚束ないだろう。そのような場合、DMはPCに対し、複合体に居住する様々な集団との同盟を奨励すべきだ。

 『白羽山の迷宮、再び』は、内部に居住空間を擁する離れ火山で展開される。君はこの製品を単独冒険として扱っても良いし、君のプレイヤーがかつて『S2:白羽山の迷宮』に挑んだ古強者であるなら、このシナリオを20年後に起きる続編と位置付けても良い。君がこの物語をどのように提供するにしても、最初の出版物を所有したり読み込んでおく必要はない;君が『白羽山の迷宮、再び』を動かすために必要な情報はすべてここにある。

 地名や人物名は絶対ではない - 君のキャンペーン世界に適合させるため、“白羽山”に関する情報は何でも変更して構わない。君は火山という設定すらも、休火山または高台、なんなら草原、沼沢地、森林に変更しても良い。もし君のゲームがオアースのグレイホーク・キャンペーン世界で行なわれるなら、“白羽山”はシールド・ランズ/Shield Landsの北東、山賊王国/Bandit Landsとリフト峡谷/Great Liftの付近に位置する。

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訳注:★“白羽山”、①自由都市グレイホーク、②アイウーズの領国、③シールド・ランズ、④山賊王国、⑤リフト峡谷。なお、本書の地名とグレイホークの地名には若干の誤差がある。コーデルだから。


 陰付枠の文章はプレイヤー向けの情報だ。DMはそれを声に出して読むか適切に言い換えろ。枠のみの文章はDM向けの重要な情報で、そこにはモンスターや魔法のアイテムに関する記述が含まれる。本書の末尾には、名前付きNPCを除く、冒険に登場するすべてのモンスターのデータが掲載されている。必要に応じてこれら4ページをコピーして使用しろ;モンスターのデータは個々の遭遇に記載していない。
 

“白羽山”の歴史/History of White Plume Mountain

 “白羽山”の歴史は古代のウィザード・ケラプティスと分かちがたく絡みあっているが、学者たちでさえすべてを知っているわけではない。この基礎的な情報はDMのために提供されている;PCが勤勉な研究の末に発見できる情報は別に項を設けている(『歴史調査』参照)。
 

古代史/Ancient History

 およそ2000年前、ウィザードのケラプティスはトゥスティンカ/Tostenhca - 幅広い道とそびえ立つジグラットを有する山裾の都市 - の“防護官/protector”に任じられた。ウィザードは寿命を延長し、多くの定命者よりも長く生きていたが、彼はあくまでも不滅性を求め続けていた。そのためか、彼は歳を経るにつれ堕落していった。4世紀に渡る期間、彼の防護/protectionに費やす代償は徐々に厄介になっていった。最終的に、ケラプティスはトゥスティンカの人々が育み、作り、売る、財のすべてを管理するに至った。新たな税 - 新生児の3人に1人を捧げる - が発表された時点で人々は立ち上がり、ケラプティスと狂えるノームの護衛団を追放した。

 拠点を失ったウィザードと彼の追従者は、南部や西部の諸都市に逃れた。だがケラプティスがどこに向かっても、彼の評判は彼より先に辿り着いていた。そして彼は誰も彼の“防護”を求めていないことを知った。この旅は3世紀に渡り、その間にウィザードは並外れた力を秘めた装具をいくつか入手した。彼に護衛団を与えたノームの秘密会議は、さらにホウェルム/Whelmと呼ばれる槌を与えた。諸神格により投獄された神話的サイクロプス/mythical Cyclopesの獄を破壊した返礼として、ケラプティスはウェイブ/Waveと呼ばれるトライデントを贈られた。遥か未来、滅びを目前にした多次元界の最後の生ける存在と交信した結果、彼はブラックレイザー/Blackrazorと呼ばれる剣を受け取った。しかし、真なる不滅性は彼の手にはなかった。

 トゥスティンカを去って300年後、ケラプティスは“白羽山”と呼ばれる大火山で、上古の生き残りであるドルイドが、不滅性の秘密を守護していると知った。火山の中で、ウィザードは溶岩トンネルで作られたもつれた迷宮と、上古の秘密を守護する古代のドルイドを発見した。2人は“白羽山”の所有権と古代の神秘を賭けて大戦闘を行なった。最終的にウィザードが勝った。ドルイドの残骸をマグマの海に放り込んだ後、勝ち誇ったケラプティスはドルイド正殿の溶けた岩で封じられた秘密の小部屋に入り込んだ。そこで彼は古代魔法の財宝と、氷の刃の原型とも云えるフロストレイザー/Frostrazor、そして得体が知れない小像を発見した。ケラプティスは小像の力を解放し、はるか彼方のトゥスティンカに対して凶悪な呪いを解き放ち、永き復讐の仕上げとした。

 その後、ケラプティスは彼の膨大な能力のすべてを死を克服することに傾注した。彼は永続化魔法や治癒といった外部要因に頼らない、1ダースもの個別の、永遠の生命に収束していく研究を開始した。そのような計画のひとつが実を結んだ。最終的にケラプティスは取得した4つの魔法の装具で増強することで、物質界からはるか隔たった陰鬱な領域にまで踏み込むことに成功した。そこで彼は永遠に定命の束縛を脱するだろう。

 ケラプティスが火山を去ってから約500年が過ぎた。彼が究極の目的を達成したか、それとも薄暗い次元界でそれを追求し続けているか、誰も知らない。彼の運命の如何に関わらず、ケラプティスは“白羽山”に帰還しなかった。
 

近代史/Recent History

 主のないまま、ケラプティスに忠誠を誓ったノームの部隊は活火山に留まり、ウィザードが洞窟内に魔法で成長させた菌類の庭園に住み続けた。外部との関りのないまま世代は交代し、陽光を受けない環境で彼らは生まれ、そして死んでいった。

 100年ほど前、ついに“白羽”の下の穏やかな日々が打ち砕かれた。財宝の物語に引き寄せられ、“大冊の兄弟団/Brotherhood of the Tome”を自称する少数の強力な英雄たちが封印された火山の空洞に入り込み、ウィザードの力の4つの装具:ウェーブ、ブラックレイザー、ホウェルム、フロストレイザーを盗み出した。これらの武器が盗みだされたことで、ケラプティスは陰鬱な領域に閉じ込められ、彼は物質界への帰還が不可能となった。

 “白羽”の住民は、部外者に山中の複合構造について知られた今、さらなる攻撃が起こることを危惧した。防護を求め、ノームはケラプティスが研究を行っていた封印洞窟を開いた。そこで彼らが多くの驚異を発見したが、白眉であったのは“白羽山”の運命を永久に変えた“ケラプティス症候群/Keraptis-imprints”だった。

 不滅性についての研究の一環として、ケラプティスは自身を呪文の基礎構造のように純粋な知性として保存しようとした。この方法を使うことで、彼は理論的に他者の精神の内側に永久に住み着くことができた。最終的に彼はこのアイデアを放棄したが、彼の研究成果の残滓 - 呪文巻物に似た形態 - は残されていた。これらの魔術(ケラプティス症候群またはK症候群と呼ばれる)は、いずれも破損しているか不完全であったが、ウィザードの意識と知識が一部またはすべて含まれていた。

 これらの巻物は解放された部屋のひとつで発見され、熱心なノームが即座にそれを記憶した。それと共に不完全ながらウィザードの意識の複写が彼の精神にインストールされた。彼は自身をケラプティスと信じ込むと即座に行動を開始し、古代のウィザードが所有していた力の武器を集め直した。オリジナルの『S2:白羽山の迷宮』は、最初の贋ケラプティスが行動した結果だった。
 

現在の状況/Current Situation

 最初の贋ケラプティスの死から20年以上が過ぎ、山の地下は大きく変化していた。彼の轍を他の者が踏み、それぞれが帰らざる君主の意識を得た。

 現在、4つの個体 - 夜闇恐れ/ナイトフィアー/Nightfear、泥跳ね波止場/スパアタードック/Spatterdock 、興醒め屋/キルジョイ/Killjoy、ぶつぶつ苔/モスマター/Mossmutter - が自身をケラプティスと信じこんでいる。これらの個体は全員が贋ケラプティスであり、銘々が元々のウィザードの人格と能力を刷り込まれ、4つの力の装具のうちひとつを保有していた(最近“夜闇恐れ”はそれを失った)。これら贋ケラプティスは忠実な追従者の軍勢を従え、山の支配権と魔法の武器4つすべての所有権を賭けて競い合っている。
 

冒険の要約/Adventure Summary

 “白羽山”に到着したPCは、入口に直接向かっても構わないし、まず火山周辺を探索しても構わない。彼女らは、山の内部でケラプティスを自称する4つの勢力が争い合っていることを知る。ちょっとした交渉術を駆使することで、他の3勢力と戦うため、いずれかの贋ケラプティスの軍勢と手を組むこともできる。最終的に、4つのケラプティスはすべて贋者であり、本物はここにいないことが判明する。

 PCが贋ケラプティスの軍勢に合流するか否かに関わらず、彼女らはプレイの過程で様々な部分的K症候群呪文を発見していく。これらの呪文を記憶していくことで、その者は自我を失って行き、段階的に贋ケラプティスと化していくことに気付く。PCは抗争とは無関係な山の住民と接触することで、このケラプティス感染症を山中に封じ込め、世界(と自身)を救い出すかを見つけることができる。より簡単な方法は、彼女らがウィザードの魔法の武器4つをすべて集め、ドルイドの正殿(第79区画)に侵入し、この次元界にオリジナリティナル・ケラプティスを呼び戻すことだ。もうひとつの方法は、パーティメンバー含むすべての顕在K症候群感染者を、追い詰め、捕え、皆殺すことだ。もし彼女らが前者を選択するなら、復活するオリジナル・ケラプティスは新生児として出現するため、彼を抹殺しようとするクリーチャーたちから守り抜かなくてはならなくなるだろう。