未完書簡集/Unfinished Tales(邦題『終わらざりし物語』)

p1499

…ダゴール・ダゴラスとメルコールの帰還による終末の到来まで、マンウェが山を降りることはないのである。モルゴス討伐にかれが送ったのは伝令使エオンウェだった。それならば、サウロンを倒すためかれが遣わすのは、聖なる民のうちでエオンウェより下位の(だが力ある)者、疑いなくサウロンと同じ頃に生まれ、もともと対等の位でかれの力を越えぬ者だろう。オローリンがその者の名であった。だが、オローリンのことは、自身ガンダルフとして明かしたこと以外、われわれには決してわかるまい。


 この後に頭韻の一六行詩が続く。


 君、聞き給うや
     遥かなる地より
 来たる五人の
     久しく秘められたる物語を?
 帰りし時はただひとり。
     他は絶えて
 人統べる世に
     中つ国を訪のうことなからん
 ダゴール・ダゴラス
     また、宿命の時至るまで。
 君、幾許か知らむ
     アマンの地に
 西方の諸王の
     密かに集いたるを。
 彼処に至る
     かの遥けき道は失われ
 死すべき定めの人の子に
     マンウェは語らず。
 嘗てありし西方より
     微睡む人の耳へ
 風はそを伝えけむ、
     夜の影蔽える
 静寂に、
     便りをもたらす
 忘れられし地
     また、過ぎ去りし時より
 数多の歳月を越え
     尋ぬる想いに応う。
 長上王は
     全て忘れたるに非らず。
 彼見給いけむ
     サウロンこそ禍の種なれ、と……


 この詩には、ヌーメノールの没落後もマンウェとヴァラールが中つ国の運命にかかわっていたことについて、もっと大きな問題に関係のある事柄が多く含まれているが、それに触れれば本書の範疇を大幅に越えてしまうにちがいない。


 Manwë will not descend from the Mountain until the Dagor Dagorath, and the coming of the End, when Melkor returns.