1983-01-01から1年間の記事一覧
「…けれどようやく今になってわたくしはかれらに憐れみを覚えます。なぜと申せば、もしこれがエルダールたちのいうように本当に唯一の神が人間に与え給うた贈り物であるとすれば、受けるのは辛いことですから。」 「そう思えることだが、」と、かれはいった…
「それでも後世に生ずるかもしれぬ災いはほかにいくらもあろう。なぜならサウロン自身、一個の召使い、あるいは使者にすぎぬからじゃ。じゃがこの世の時の流れをすべて支配するのがわしらの役目ではない。わしらの役目はわしらの置かれた時代にわしらのよく…
これはエオウィンでした。そしてデルンヘルムでもありました。なぜならメリーの心には馬鍬砦を出立する時に見た顔の記憶がはっと思い出されたからです。望みを持たず、死を求めに行く者の顔でした。同情の念がかれの心を満たしました。それと同時に強い驚嘆…
奥方は片手を高くあげました。するとその手にはめた指輪から強い光が発せられて、彼女一人を明るく照らし出し、あとのものを暗いままに残しました。フロドの前に立つ彼女の姿は今や測りがたいほど高く、耐えがたいほど美しく、戦慄すべき恐ろしさとともに、…
「旅の道が暗くなった時に別れを告げる者は信義にもとるやからよ。」とギムリがいいました。 「そうであるかもしれぬ。」と、エルロンドが言いました。「しかし、日の暮れるのを見たことがない者には、必ず暗闇を歩いてみせると誓わせぬがよい。」 「けれど…
「指輪隊は九人としよう。悪しき九人の乗手どもに対し、九人の徒歩の者が行くのだ。そなたと、そなたの忠実な僕とともに、ガンダルフが行くだろう。なぜといえば、これはかれ一代の大仕事となるだろうし、おそらく生涯のいさおしをしあげる花となるかもしれ…