『指輪物語』の好きなシーン4

 これはエオウィンでした。そしてデルンヘルムでもありました。なぜならメリーの心には馬鍬砦を出立する時に見た顔の記憶がはっと思い出されたからです。望みを持たず、死を求めに行く者の顔でした。同情の念がかれの心を満たしました。それと同時に強い驚嘆の思いも。そして不意にかれの種族特有の燃え立つのに時間のかかる勇気が目覚めました。かれは手を握りしめました。この女(ひと)は死んではいけない。こんなに美しく、こんなに身を捨てて! 少なくとも助けを知らずにただ一人で死んではいけない。

王の帰還、上巻』194ページ