ナルニア国物語/第3章:アスラン王と魔法の島 The Chronicles of Narnia: The Voyage of the Dawn Treader

 まあまあな駄作


 今作はナルニア3本目の『朝びらき丸 東の海へ』の映画化らしい。


 なんかな。『カスピアン王子のつのぶえ』の時も感じたが、ルイスの方向性と映画化の方向性がチグハグ過ぎだ。
 ぶっちゃけ、映像化という観点においては価値があるが、それ以外はムダ。
 次回作は『銀のいす』と『馬と少年』を省いて、『魔術師のおい』に行くとか。


 どうしょもねぇなぁ・・・・。




 基本的に、ナルニアは一貫して“鼻つまみ者の”主人公の成長を描く作品だ。
 『ライオンと魔女』では、兄弟に不満を持つエドマンド、つまらない現実から逃避していたルーシィ。
 『カスピアン王子のつのぶえ』でも同じく両名とカスピアン(成長物語としては弱い
 そして今作では、ひねくれ者の少年ユースチス。
 ところが、このユースチスがほとんど成長していない。それなりに成長は描かれているのだが、はっきり言えばおまけ。無くても良いくらい。まあ、だからこそユースチスが活躍する『銀のいす』が省かれてしまうのだが。
 まずユースチスの役者がダメ。どちらかといえば不細工型ではなく、美少年型の鼻高々なクソナマイキな少年にした方が良かった。そうすれば、『銀のいす』でも主役がはれただろう。『銀のいす』では、ユースチスと友人のジル、どろあしにがえもんというキャラクターがメインになるが、女性客をひきつける目的としてはユースチス以外は使えないだろう(カスピアンはすでに老王となっている)。つまりこの段階でミス。
 『銀のいす』は、ちょっとはマシになった少年が、わずかな仲間と共に巨人の国まで乗り込んで囚われの王子を助け、魔女の裔を倒すまで成長するという大冒険なのに、これをカットとはね。


 いやはや。


 王子を連れ帰ったユースチスはカスピアンと再会するのだが、彼はすでに亡くなっていた。
 その亡骸を前にユースチスは泣く。これが子供のようにでも少年のようにでもなく、おとなのように泣く。これこそが彼の成長の証だろうし、ダメ少年がここまで成長するのを描いてこその作劇だと思うのだが。
 そのあと、“世界の果て”で復活したカスピアンとユースチスの会話や、その一同がそろって“この”世界にやってきて軽く暴れたりと楽しいシーン続出なのにな。


 なおユースチスは最終作『さいごの戦い』でも主役を務める。『銀のいす』での成長なくして、どうすんだ?

製作総指揮 ペリー・ムーア
製作 マーク・ジョンソン、アンドリュー・アダムソン、フィリップ・ステュアー
原案 ナルニア国物語』C.S ルイス
脚本 マイケル・ペトローニ、クリストファー・マーカス、スティーブン・マクフィーリー
監督 マイケル・アプテッド