ファンタジー作家、デイヴィッド・エディングス氏、逝去(2009年6月4日(木)版より)

http://www.nevadaappeal.com/article/20090604/NEWS/906039854/1070&ParentProfile=1058


 水曜日、高名なファンタジー作家であるデイヴィッド・キャロル・エディングス氏が、火曜日にカーソン・シティの自宅で老衰死したと遺族が発表した。
 エディングス氏は77歳で、2ダース以上の作品を発表している。彼の最も著名な作品は、『ベルガリアード』&『マロリオン』シリーズだ。火曜日の夜、兄の事務手続きのためにカーソン・シティを訪れた70歳になる弟であるデニス・エディングス氏によると、彼の遺作は2006年に発表された『新しい神々』であった。


 デイヴィッド・エディングス氏は1931年7月7日、ワシントン州スポーケンで生まれた。デニス氏によると、デイヴィッド氏は高校時代に作家となることを決心したという。 しかし彼の最初の勤めは米陸軍への2年間の従軍だった。1956年に同じくデニス氏が軍役につくと、彼は退役した。
 「彼は「私と交代だ」と言ったよ」と若きエディングスは笑った。


 退役したエディングス氏は食料雑貨店チェーンに就職し、1973年には処女作である『ハイ・ハント High Hunt』を出版した。これはファンタジー作品ではなくベトナム戦争直後の時代であり、4人の少年が狩猟旅行を通じて大人になるとは何かを探求するテーマで描かれている。
 1978年、エディングス氏はJ.R.Rトールキンの『指輪物語』を取り上げ、自分はファンタジーを書くことが天命であると感じた。
 「彼は言ったよ。「これだよ、これ」」とデニス氏は語る。


 エディングス氏はすぐに世界設定を始め、8冊 *1 からなる『ベルガリアード物語』、その続編である5冊からなる『マロリオン物語』をしたためた。
 エディングスの妻リー女史も著述には貢献した。しかし彼女が著作権を認められたのは、『ベルガリアード物語』の5冊目、『勝負の終わり』からだった。
 「リーは信じられない想像力を持ってたよ。 彼女は『ハイ・ハント』より後の本すべてにデイブに協力していたんだ」とデニス氏は語る。「ある時、彼女は言ったよ。「私があなたを助けるのは、私はそのページに価値があると認めているからよ。」とね」。兄は「もちろん君の言うとおりだ。」と応えたよ。


 リー女史は1999年ころ、何回かの卒中の発作に襲われたとデニス氏は語る。
 「卒中の結果、リーの知性は3歳児にまで後退してしまったよ。」とデニス氏は語る。
 しかしエディングス氏は、彼が1988年に購入したカーソン・シティーの自宅で、義母の助けを借りて妻の介護を続けた。
 「私はなぜデイヴィッドが貯金を利用して、リーの面倒を見るための人を雇わなかったか理解できなかったよ。」とデニス氏は語る。
 エディングス氏は家族を養いつつ、リー女史の面倒も見ていた。
 「彼はリーが国の世話になることを由としなかったんだ。そして我々もそれを尊重しなければならなかったよ。」とデニス氏は語る。


 彼女は2007年2月に亡くなった。その1ヶ月後、カーソン・シティー北東にあるエディングス氏のオフィスで失火事件があった。
 2007年1月25日、世界でも著名な作家が、自宅前の路上でパジャマにスリッパ履きという姿で立ち尽くしている姿が目撃された。
 エディングス氏はバカな失敗をしでかしたことを認めている。彼は自家用スポーツカーの燃料タンクを水洗いしている際のことだ。
 流れ出てきた液体が水かガソリンかを試すため、エディングス氏はそこに火をつけた紙切れをほうったのだ。 ガレージはたちまち炎上した。
 ガレージ下の部屋にはエディングス小説のオリジナル手書原稿があった。 デニス氏はそれらは持ち出すことが出来たと語る。
 「心に1つの言葉が浮かぶよ。」デイヴィッド・エディングス氏は火災を前にして言った。 「“バカ”だ。」


 かつてのエディングス氏はそのような男ではなかった、デニス氏は語る。
 カーソン・シティー保安部は、8月中に4回に渡り、ボナンザ通りにあるエディングス氏の自宅から通報があったと語る。 通報記録から、エディングス氏は痴呆であったと思われる。
 「彼は長い間、痴呆症の気味があった。そして去年の9月から非常に悪化していた。」とデニス氏は語る。 「彼は24時間監視が必要だった。 彼が死んだという知らせは驚きじゃなかったよ。」


 彼が亡くなる月のこと、エディングス氏は彼が今までに取り組んだ仕事とは完全に異なる原稿に取り組んでいた。 それは未完成だ、とデニス氏は語る。
 「それはまったく、まったく異なるものだ。 私はそれが、正確にはファンタジー的風刺文学とは呼ばれないだろうが、新たなジャンルを考えだすようだろう。」とデニス氏は語る。
 彼は、未完成作業を含めてエディングス氏の原稿は、すべて彼の母校であるポートランド州のリード大学に送られると語る。


 私は氏の弟に、人々に彼について伝えたいことがないかと尋ねたところ、デニス氏は即答した。
 「デイブは非常に、非常に孤独が好きな人だった。」と彼は語る。 「けれども、彼は素晴らしい物語を示すことが好きな、素晴らしい作家だった。」
 エディングス氏の存命中の兄弟は、ワシントン州ウェナチーのケイ・コックスに弟妹が、ジョージア州キングスランドのリチャード・ブレイクに異母兄弟が住んでいる。
 デイヴィッド氏の名誉にかけて犯罪歴はないとデニス氏は語る。


 「デイヴィッドは才知に長けた二人としていない人物です。私たちは彼がいなくなってしまったことを誠に寂しく思います。 でも、私たちと読者の皆様の手には、彼の言葉の精髄が残されています。そしてそれを紐解くことで、心を揺さぶる感動が得られるのです。」
 これはエディングス氏の義妹であるジェーン・エディングス女史からの電子メールだ。
 「あなたの残してくれたもの。それに私たちは皆感謝しています。」



邦訳タイトル 原書タイトル 出版年 *2 シリーズ
気高き狩り(未訳) High Hunt 1973  
予言の守護者 Pawn of Prophecy 1982 ベルガリアード物語
蛇神の女王 Queen of Sorcery 1982 ベルガリアード物語
竜神の高僧 Magician's Gambit 1983 ベルガリアード物語
魔術師の城砦 Castle of Wizardry 1984 ベルガリアード物語
勝負の終り Enchanters' End Game 1984 ベルガリアード物語
西方の大君主 *3 Guardians of the West 1987 マロリオン物語
砂漠の狂王 *4 King of the Murgos 1988 マロリオン物語
異形の道化師 *5 Demon Lord of Karanda 1988 マロリオン物語
眠れる女王/水晶の秘術 *6 The Diamond Throne 1989 エレニア記1
闇に選ばれし魔女 *7 Sorceress of Darshiva 1989 マロリオン物語
四つの騎士団/永遠の怪物 *8 The Ruby Knight 1990 エレニア記2
宿命の子ら *9 The Seeress of Kell 1991 マロリオン物語
聖都への旅路/神々の約束 *10 The Sapphire Rose 1991 エレニア記3
負け犬(未訳) The Losers 1992  
聖騎士スパーホーク/炎の天蓋 Domes of Fire 1992 タムール記1
青き薔薇の魔石/暗黒の魔術師 The Shining Ones 1993 タムール記2
冥界の魔戦士/天と地の戦い The Hidden City 1994 タムール記3
銀狼の花嫁/魔術師の娘/王座の血脈 Belgarath the Sorcerer 1995 ベルガリアード物語6(仮)
運命の姉妹/貴婦人の薔薇/純白の梟 Polgara the Sorceress 1997 ベルガリアード物語7(仮)
リヴァの写本(未訳) The Rivan Codex 1998 ベルガリアード物語8(仮)
ジーナの歌(未訳) Regina's Song 2000 リー・エディングス遺作
アルサラスの贖罪、黒猫の家/女王と軍人/善と悪の決戦 The Redemption of Althalus 2000  
四方を統べる神/蛇民の兵団 The Elder Gods 2003 ドラル国戦史1
神託の夢/峡谷の昆虫人 The Treasured One 2004 ドラル国戦史2
水晶砦の攻防/不死なる侵略者 Crystal Gorge 2005 ドラル国戦史3
高峰の決戦/新しい神々 The Younger Gods 2006 ドラル国戦史4


 リストを作ってて悲しくなった。ベルガラスはポレドラを失った後も、作家生活を続けていたんだな (つω;`)


High Hunt

High Hunt

  • 作者:Eddings, David
  • 発売日: 1993/12/06
  • メディア: ハードカバー
The Losers

The Losers

  • 作者:Eddings, David
  • 発売日: 1992/06/01
  • メディア: ハードカバー
Regina's Song

Regina's Song

*1:この8冊には、『魔術師ベルガラス』、『女魔術師ポルガラ』、未訳の『リヴァン・コーデックス』が含まれると思われる。

*2:あくまでも出版年であり、執筆時期はこの以前となる。

*3:旧タイトル:西方の守護者/熊神教徒の逆襲

*4:旧タイトル:マーゴスの王/禁じられた呪文

*5:旧タイトル:疫病帝国/カランダの魔神

*6:旧タイトル:ダイアモンドの玉座・上下

*7:旧タイトル:メルセネの錬金術師/ダーシヴァの魔女

*8:旧タイトル:ルビーの騎士

*9:旧タイトル:ケルの女予言者/宿命の戦い

*10:旧タイトル:サファイアの薔薇・上下