アサス、8つの特徴
ダークサン設定世界はいくつかの意味においてユニークだ。D&Dゲームとしてよく知られている特徴が欠けていたり、また明らかに対抗している。アサスは輝やかしい騎士とローブをまとった魔道士、深い森林や信仰の殿堂とは無縁だ。アサスの砂模で冒険することは、ファンタジーや物語世界の伝承と一線を画す、壮麗なる野蛮の世界に入ることを意味する。深紅の太陽の下で生活すること自体が冒険なのだ。
アサスに踏み込む者は世界と人々、モンスターについて学ばなくてはならない。以下の8つの特徴は、ダークサン設定世界の最も重要な特徴を要約している。
- この世界は砂漠だ。
アサスは果てしない砂の海に覆われた、暑く乾燥した惑星だ。生命なき塩の平原、石の荒野、岩だらけの荒地、潅木だらけの低地、それよりも嫌な土地。夜明けの瞬間から、深紅の太陽は黄褐色の空から照りつける。気温は平常で華氏100度(摂氏37度)を越え、午前半ばから午後遅くまで華氏130度(摂氏54度)に達する。風はかまどの突風のようであり、酷暑を和らげる効果はない。風に運ばれた塵と砂がすべてを黄褐色に多い尽くす。
この近付き難い世界であっても、ごくわずかなオアシスや緑野の周囲に都市や集落が存在する。いくつかの土地では数年間に渡って降雨がなく、肥沃な土地であっても年に数週間だけ霧に覆われる程度であり、それ以外は酷暑と乾燥の季節となる。これら文明の地の彼方の荒野には、放浪者や砂賊、飢えたモンスターが彷徨している。
アサスは常に砂漠であったわけではなく、干上がった大地には昔日の都市の廃墟や干上がった河川や海の痕跡がある。干上がった河川には古代の橋がかかり、砂の海には石造りの埠頭が残されている様子に、かつての世界の名残が見える。 - この世界は野蛮だ
アサスの人生は過酷で短い。血に飢えた砂賊、貪欲な奴隷商人、野蛮な非人間の大群が砂漠と荒野を席巻している。都市は少しはマシだ;不滅の専制君主の支配が息苦しくなければ。奴隷施設はアサスのそこいら中にある。そして多くの不幸な人々が鎖につながれ、苛烈な監督者に苦しめられている。毎年何百もの、ことによると何千もの奴隷が、血塗られた闘技場の見世物のために死ぬ。慈愛や同情、親切 ‐ こういった概念は存在する。しかしそれらは珍しくて、また貴重だ。ただ愚者のみがこのような宝を望む。 - 金属は希少だ
たいていの武器と鎧は骨や石、木、その他の素材から作られている。チェインメイルやプレート・アーマーは妖術王の宝物庫にのみ存在する。鋼の刃はこの上なく貴重で、ほとんどの英雄が人生において目にすることはない。 - 秘術魔法は世界を汚す
古代戦争における[秘術]魔法の無謀な使用はアサス全土を荒野と化した。[秘術]呪文を発動するためには付近からパワーをかき集めなくてはならない。植物は黒く枯れ落ち、動物や人々に痛みをもたらし、大地から生命が消えうせる;そこは永劫に不毛の地となる。世界を気遣い、それ以上傷つけないように注意しながら呪文を発動することは可能だ。しかし維持よりも汚す方がより多くのパワーをもたらす。結果として、ソーサラーやウィザードといった[秘術]魔法の遣い手は、彼女らが維持するにしても汚すにしても、アサス全土で迫害される。ただ最強呪文遣いだけが、報復を恐れることなく[秘術]の力を用いることができる。 - 妖術王が都市国家を支配する
たった1つを除き、すべての都市国家は巨大な力を持つ恐るべき汚染者が支配している。これら強力な呪文遣いは何世紀にも渡って玉座を占め続けている;今生きている誰も、妖術王が現れる以前を覚えていないほどに。若干の者は神を自称している。またある者は神に仕えていると称している。若干の者は暴虐な圧制者だ。他の者の圧制はさほどではない。妖術王は司祭や貪欲な官僚、野心的な修道騎士団、王の息がかかった汚染者を通して支配を行なう。ただひとつの都市国家ティーアだけは自由を標榜しており、多くの勢力がこれを消し去ろうと企てている。 - 神々は沈黙する
はるか昔、惑星に緑があふれていたころ、プライモーディアルは神々を征服した。今日、アサスは神なき世界だ。クレリックやパラディンはおらず、預言者も修道会もない。古代の廃墟の中に横たわる古い祠と崩れた神殿が、かつてアサスに神々が顕現していた証拠だ。砂漠風の中にもため息以外は何も聞こえない。
[信仰]の導きは存在せず、他のパワー・ソースがその穴を埋めている。[サイオニック]パワーはアサスでよく知られ学ばれている;知的とは言えない砂漠のモンスターですら致命的な[サイオニック]能力を持つ。シャーマンとドルイドが世界の[原始]パワーを用い、しばしば[元素]パワーも用いる。 - この世界は苛烈なモンスターが彷徨する
砂の惑星はそれ自身致命的な生態を持つ。アサスには牛や豚、馬がいない。代わって、人々はエルドラスの群れを飼い、カンクやクロドラスに乗り、またメキロットで台車を牽く。ライオンやベアー、ウルフといった野獣は存在しない。それらに代わる恐怖として、イド・フィーンドやバーズラグ、テンボがいる。多分、アサスの過酷な環境が頑丈かつ邪悪なクリーチャーを育てるのか、あるいは生命源に古代魔術の毒に触れることから、死につつある世界は次から次へとモンスターを生み出すのだろう。いずれにしても砂漠は危険だ。そして愚者と狂人のみがひとり旅をする。 - 有名な種族は君の予想とは異なる
典型的なファンタジーの傾向はアサスの英雄に当てはまらない。多くのD&D設定で、エルフは知的で慈悲深い森の住民であり、悪の侵攻から故国を守る警護者である。アサスのエルフは遊牧民であり、また砂賊、商人、盗賊だ。ハーフリングは河岸に住む陽気な民ではない;彼らは余所者嫌いの首狩族で、彼らの山林に不法侵入した者を狩って殺し、肉を喰らう。ゴライアスとハーフ・ジャイアントは一般に残虐な傭兵であり、妖術王やその軍事結社の精鋭護衛や執行官として都市国家をまとめる。
本書の使い方
- DM向け
ダークサン世界でD&Dゲームを動かすため、君はPHB、DMG、MMを必要とする。『DARK SUN Campaign Setting』はアサスの致命的な砂漠に適したキャラクターの作成手順や、この野蛮かつ素晴らしい世界を紹介している。この本の第6章はDM向けであり、ダークサン・ゲームを行なうためのツールを提供している。伴書である『DARK SUN Creature Catalog』は、モンスターやモンスター・テーマ、妖術王のデータが含まれている。 - PL向け
ダークサン世界には典型的なドワーフ・クレリック、ハーフリング・ローグ、エラドリン・ウィザードの居場所はない。この世界でのドワーフ・クレリックは、砂漠のシャーマンや心安いアーデントであるかもしれない。ハーフリングは野卑な忍び寄る殺し屋であり、ヒューマンのウィザードは民衆に殺されることを避けるため、その[秘術]パワーをひた隠しにするだろう。この本はPHB(1〜3)に記されたキャラクター作成を拡張し、アサス流の作成や組み合わせ、テーマ、“感触”を君のキャラクターに与える。残忍な世界が君の挑戦を待っている。君は深紅の太陽の猛威を生き残ることができるか?