フラズ・アーブル “欺きのプリンス”

 こちらの翻訳 ( ゜ω゜).。o0(Fraz-Urb’luu: Prince of Deception | Dungeons & Dragons

 長い歴史を持つにも拘らず、フラズ・アーブルはD&Dデーモン・ロードとしてはさほど著名ではない1体だ。


 しかしながら、敵に陰謀を廻らせ欺くことを好む彼の心胆は、『デーモンの憤怒』シリーズの物語に登場する彼を忘れ得ぬ存在とするだろう。


欺きの起源


 フラズ・アーブルは1982年に発売された冒険モジュール『ツォイカンスの失われた大洞窟』の付録“モンスターと魔法のアイテム”に記された4体のデーモン・ロードの1体としてデビューした。そこで彼は“欺きのプリンス”にしてアビスの“特色なき平面”の支配者と記されていた。彼はまたグレイホーク城の地下に幽閉されていた強力な存在であることが明らかになった - そして彼は世界中の人々に復讐を切望していた。


 フラズ・アーブルが幽閉されたのは、ゲイリー・ガイギャックスとロブ・クーンツによる最初のグレイホーク城キャンペーンに裏話がある。(アーニー・ガイギャックス演ずる)冒険者エラックの従妹と(マーク・ラトナー演ずる)エイレラックが、グレイホーク城の地下深くでデーモンの顔を模した低浮彫を発見した。これこそがフラズ・アーブルの牢獄であり、“魔界” - オアースを虎視眈々と狙う魔群の集結地 - への入口だった。騙された冒険者らはデーモン・ロードを解放してしまい、彼は感謝のしるしとして両者をアビスへと連れ去ってしまったのだ! (彼女らは後に帰還できたが、一対のヴォーパル・ソードとホーリィ・アヴェンジャーが失われた。)


 “欺きのプリンス”はその後AD&D1版において、たまに言及された。1983年の『モンスター・マニュアルII』では『ツォイカンスの失われた大洞窟』とほぼ同じ情報が記されていたが、1987年の『次元界の書』でフラズ・アーブルは幽閉の後にアビスの故郷を再建していると記された。フラズ・アーブルは1988年の『赤鉄鉱の玉座』でチョイ役として登場するも、多くの1版デーモン・ロードと同じく、その冒険は彼に関する口伝に影響を与えなかった。一方、ゲイリー・ガイギャックスはD&D公式を離れた後、1988年の『デーモンの舞踏』で彼をヴァラズ・フルーと命名し直して積極的に活用した - 彼がTSR社を離れる前から執筆していた、ローグのゴード小説の最終作でだ。


 AD&D2版では、フラズ・アーブルはほとんど忘れられていた。彼の最も知られた登場は1997年の『悪との対面:フィーンド』であり、“フラズアブル”と名を簡略化され、アビス第176層“虚ろの中心”が根拠地とされた。


最近の復帰


 2000年に始まったD&D3版において、フラズ・アーブルに注目が戻り、アビスの根拠地が設定された。その行程は2005年7月の『ドラゴン誌333号』で始まり、『イグウィルヴのデモノミコン』記事でデーモン・ロードと“虚ろの中心”の詳細が掲載され、そこで“欺きのプリンス”は初めて総天然色のイラストが描かれた。


 その記事ではまた、フラズ・アーブルを幽閉した人物にも触れていた:ウィザードのザギグだ。この記事は次の登場する、2006年の『魔物の書?:奈落の軍勢』で決定付けられ、その後のD&D4版で関連する物語が明らかとなった。2012年8月の『ドラゴン誌414号』の『イグウィルヴ - グラズズトの情婦』と『ダンジョン誌208号』の両誌にて、如何に魔女王イグウィルヴがザギグを支援してフラズ・アーブルを幽閉したか、その後彼女が如何にデーモン・ロードのグラズズトを幽閉したかの顛末が語られている。


 『アビスの外へ』は、『赤鉄鉱の玉座』に続いてフラズ・アーブルが登場する第二の冒険である。“欺きのプリンス”としての長き歴史に相応しく、『デーモンの憤怒』シリーズでこのデーモン・ロードは詐欺師の役割を務める。しかしながら、『アビスの外へ』で彼は長きに渡って幽閉された物質界に戻ることに気が進まなかった - 経験豊富な冒険者には、そこが彼のパワーを克服するために付け入る隙となるだろう。


 こちらは『ツォイカンスの失われた大洞窟』での項目を訳したもの。

 フラズ・アーブルの巨体は短く粗い毛で覆われている。彼の足は幅広で広がっており、彼の手は太くて短いがとても大きい。彼の顔は美しいが残酷で、口には牙が生えている。彼の頭は大きく尖っており、そして頭蓋骨の上にまでギザギザの両耳が伸びている。背中には巨大な黒い翼が生え、無毛の尾は長く、残忍な棘が生えている。彼の髪は水色で、肌は灰色だ。


 このデーモンの膂力はストーム・ジャイアントの如く強いが、彼はその称号に相応しく、彼は敵を騙して敗北させることを好む。何世紀にも渡り、彼はグレイホーク城下層の迷宮に刻まれた浅浮彫の顔に幽閉されていた。多くの不用意な冒険者がこの顔と対話した後に破壊された。彼は剛力のクレリックと強力なマジックユーザーを、英雄に相応しい偉業を成すように騙して牢獄から脱出を果たした。“欺きのプリンス”は無自覚のうちに脱出の道具と化した奴隷らを連れてアビスの領地に帰還した。彼は全人類に復讐を誓った。フラズ・アーブルはすべての人間の言葉を話し、かつテレパシーで意志疎通ができる。


 フラズ・アーブルは毎ラウンド3回の攻撃を行なう16+のヒット・ダイスを持つモンスターだ。彼の剛力の拳はそれぞれ1d6+12ポイントのダメージを与える。彼は1-12ポイントのダメージを与える15フィートの尾で斬り付けることもでき、また彼は尾を対抗者に絡めて持ち上げて突き刺し、3d6ポイントのダメージを与えることができる。


 毎ラウンド1回、フラズ・アーブルは以下の能力から1つを使うことができる:ダークネス半径30フィート、ディスペル・マジック、ヒュプノティック・パターン、ミスディレクション、ポリモーフ・アザー、ポリモーフ・セルフ、プログラムド・イリュージョン、テレキネシス10000gp、テレポート、ヴェール。毎日1回ずつ、彼は以下の能力を使うことができる:プレイン・シフト、パワー・ワード・ブラインド、プリズマティック・スプレー。これらの能力の呪文はすべて20レベルで使用される。


 彼は1-4体の壱型デーモンをゲートで招来することができる(60%)が、彼は同様の方法で(75%)他のデーモン・プリンスをこの場所に招来されたと騙して信じ込ませることができる。“欺きのプリンス”は他のプリンスが到来する前に立ち去るため、激怒するプリンスはおそらく(85%)フラス・アーブルの対抗者を攻撃する。この策略をフラズ・アーブルは大変楽しんでいるため、彼はゲートで他のデーモンを呼ぶよりも多用する(75%)。


 “欺きのプリンス”は+2以上の武器でのみ傷を負わすことができる。加えて70%の魔法抵抗を持ち、彼は[精神作用]と心術(チャーム、コマンド、ヒュプノティズム、サジェスチョン、ドミネイション)の呪文/サイオニック・ディシプリンに対して完全耐性を持つ。彼は冷気、電撃、火、ガスから半分のダメージを受ける。


 フラズ・アーブルはアビスの次元1つ“特色なき平面”を支配している。実際、次元の特性は彼に支配されており、彼の命ずるままに丘や谷間、洞窟などなどを作り出すことができる。その次元は人間にとって胸が悪くなるほど憂鬱だ。そこに旅をして帰還したただ2人の人物は、そこでは魔法のアイテムの魔力がすべて失われてしまうと報告した。彼らは自身最大の魔力を秘めた剣を失った。従ってほとんど確実なことに(90%)、そこでは魔法のアイテムが失われ、アーティファクトやレリックすら廃物と化すだろう。


 “欺きのプリンス”は自身の武器としてロッド・オヴ・ビガイリングとロッド・オヴ・ルーラーシップ、スタッフ・オヴ・コマンドを兼ねたスタッフを所持している。この武器は彼が幽閉されている間に盗まれ、以来失われたままだ。他のデーモン・プリンスはこのアーティファクトが取り戻されるのを望んでいない。