「ザ・ザナサーが実在するかどうかなんて知らんよ。でも俺がウォーターディープで働いていると分け前に与れるのは確かだ。なんで無意味な詮索をしなきゃいけないんだい?」
「ザナサー(またはしばしば「ザ・ザナサー」)」という名前は1世紀以上もの間、ウォーターディープの闇の中で囁かれている。ザ・ザナサーのギルドの悪名高い指導者の素生は一度も明らかになったことはなく、市内で活動するローグ、シーフ、巾着切り、密輸商人等は一様にそのような人物はいないと断言する。
多くの人々は、ザ・ザナサーというのは庶民に恐怖を叩きこむための架空の悪漢であると信じている。1人の個人が、ウォーターディープの盗賊ギルドという巨大で複雑な組織を、長期間に渡って運営するのは不可能であると考えられているからだ。結局のところ、ザ・ザナサーの物語は100年以上昔から続いている。おそらくは、過去に犯罪王は実在したが、常識的な範囲で考えて彼は既に死んでいるのだろう。
奇妙な継承譚/Strange Succession
ザ・ザナサーは実在する。そしてウォーターディープにおける最も堅く守られた秘密の1つは、ザ・ザナサーのギルドの頭目がビホルダーであるということだ。多くのビホルダーが、ギルドの長い歴史の間でザナサーの地位を襲名した:現在の襲名者は13年前からその地位にある。
ザナサーはギルドを運営した最初のビホルダーの本名だった。後にウォーターディープの暗黒街で勢力を伸ばしたが、他のビホルダーの癇に触れてしまった。ザナサーは“御目/The Eye”と呼ばれるライバルに暗殺され、秘密裏にその地位を襲われた。“御目”が冒険者によって殺された後、3番目のビホルダーがその地位を襲った。
数年の間に多くのビホルダーがザナサーの称号を襲った。ある者は前任者を抹殺し、ある者は平和裏に継承した。エルダー・ビホルダーのザンダルツリスラル/Xandulzrithral は後者に含まれる。彼は標的として生きるより退任することを選んだ。混乱を助長したのは、ウォーターディープには他にもビホルダーが住んでおり、彼らはザ・ザナサーのギルドと何の関係もないにもかかわらず、その活動がザナサーの仕業と混同されることだった。そのようなライバルの1体がロスジョウズ/Lothjawsとして知られるズロロスズラウ/Xlorothxrauだ。ザナサーを継承したビホルダーは、他人の仕事が自分の仕事のように語られることを非常に喜んだ。
前回のザナサー(以前の名はアイザルクター/Izulktur)が地位を得たのは短期間だった。それは元々4つの種族からなるビホルダー集団の1体だった。ザナサーの地位に就いた後も、アイザルクターは魔法を使って元の集団と接触を続け、ウォーターディープにおける進捗や情勢をやり取りしていた。最終的にそのクリーチャーは飽きた。ビホルダーは長期間ねぐらに閉じ込められ、自分を隠し続けることが嫌になったのだ。ザナサーは集団に交代を送るよう依頼した。集団は下僕であるカルディア/Kal'dirという名前のドラウをウォーターディープに送り込み、継承を手伝わせた。
カルディアは集団の新顔であるザシャクスズ/Zushaxxが、ザナサーの継承に興味を持っていることを伝えた。ザシャクスズがウォーターディープの根城に来るまでに、アイザルクターはカルディアを信頼して様々な秘密を打ち明けた。ドラウには継承中にザシャクスズを助け、その後も新たな指導者に仕えるようにと指示が下された。集団はドラウの家族を殺した者たちに対し報復を行うことでカルディアの忠誠に報いた。
ザシャクスズに交代した後、カルディアを除きギルドの上級幹部と代行者たちは一新された。ドラウは人選に関して役立つ補佐だった。ザシャクスズはザナサーとしての初年を、前任者たちの集めた膨大な書庫を読み通すことで過ごした。無数の情報に触れたそれは、飢えるようにより多くの情報を求めるようになった。
現在のザナサーは若く意欲的で、前任者たちより衝動的だ。ギルド指導者はその力を増大させる好機を逃さない。彼は信用できる十分な数の副官が揃ったなら、影の世界から飛び出し、昂然とその正体がビホルダーであること示すべきと考えている。
ゲームにおいて:もし君がザナサーのデータを求めるなら、君はモンスター・ヴォールトのビホルダーのデータを用いることができる。