1982 TSR9065 WG4 タリズダン神の“忘れられた神殿” The Forgotten Temple of Tharizdun


導入
 この神殿は旧い時代に“とこしえの闇の君”タリズダン神を崇拝する秘密の礼拝所として建立された。それは最も邪悪な人々を引きつけ、教団は何世代もの間繁栄し、次々と周辺の国々に軍勢を繰り出しては恐るべき行為を成した。しかしながら、遂にはタリズダン神と彼の邪悪に抵抗する人々との間に大いなる戦いが開かれた。彼女らは彼自身を滅ぼすことはできないまでも、彼の力に打ち勝ち、そして誰にも発見できない場所に彼を投獄するほどに強かった。斯くてタリズダン神は大地の表面から、既知の次元界のすべてから消え失せ、再び姿を現すことはなかった。


 しばらくの後、彼の使徒が神格を顕現させるべく無人の神殿に舞い戻ってきた。これらの邪悪な人々の多くは強力なマジックユーザーとクレリックだった。一同はタリズダン神に何が起きたかを突き止めると、彼を解放して帰還させ、いま一度彼らを統治してもらうべく全力を尽くした。これら“とこしえの闇”の使徒の試みはすべて無駄に終わったが、占術と捜索の結果、神殿の直下に“黒き嚢胞”が存在することが明らかとなった。魔法と肉体的作業により、彼らは“黒き嚢胞”を求めて下方への掘削を始めた。彼らがそこに見いだしたものは、彼らを動揺させ、そして落胆させた。半球状の部屋の中には、(レヴィテーションで浮かぶ)巨大な黒い針状の岩があった。これがタリズダン神の物理的顕現なのだろうか? 誰にも分からなかった。それは紫色の蒸気のようなエネルギーに包まれ、黒く不明瞭な姿をしていた。この謎は、いかなる儀式でも、呪文でも、魔法でも解くことはできなかった。時間だけが過ぎていった。探求者たちはこれが彼らの投獄された神格であるかの確認作業自体を儀式として定めた。それが祭壇に安置されていると見せかけるため、黒い針状の岩を使った高さ12フィートの祭壇が真下に築かれた。世代を経るにつれ、下僕たちは“黒き嚢胞”の中で生き残るためにタリズダン神に哀歌と祭儀を捧げ続け、果てしなき奉仕のみが覚醒に至る手段であると定められた。さらに時間が経過すると、その儀式すらも形骸化して無意味なものと成り果てた。タリズダン神のクレリックは、初期の使徒たちが心血注いで集めた貴石 - 5000gpから50000gpの価値を持つ333個の宝石 - で私腹を肥やし始めた。これらの宝石は徐々に価値の低い石に置き換えられて行き、この神の従者は別の神に鞍替えすると別の場所で悪を成すために姿を消していった。


 最終的に、ほんのひと握りの忠実なクレリックたちが覚醒儀式を日々繰り返すために留まった。このひと握りのうち何人かがモンスターによって殺され、他の者たちは遂には老いて死んだ。最後の大司祭は、ただひとり死に場所を求めてダンジョンを彷徨い、遂に下方神殿にその場所を定めた。そうして、約1世紀前にタリズダン神の最後の使徒が死んだ。それ以来神殿には、人間に分類される居住者がいなくなった。


 やがて神殿は、様々な徘徊するモンスターに一時的なねぐらとして使われた。数体が奥まで進み、また数体が下層にまで進み、そしてその習性に基づいて殺し合った。何十年も経過した頃、人間たちの記録はすでにおぼろであり、最後のクレリックが死去する前に神殿は少数の賢人と学識の深い人々以外のすべてに忘れられていた。ここを棲処とした歴代のクリーチャーたちは、この場所の名称も目的も知ることはなかった。ここは正しくタリズダン神の“忘れられた神殿”であり、探検に赴いた冒険者がそれを確定するまでそのままでいるだろう。