“終末の要塞” Fortress of Conclusion 『25 父の過ち The Father's Sins』

 この部屋は五角形をしている。幅広い壁面同士が出会う角には、彫刻された石で作られた大きな円柱が立ち、その間には重たげな棚が差しかけられている。棚は五つの壁を、床から天井まで覆い尽くし、大冊、大瓶、小瓶、小像、よくわからないあれやこれや、数本の奇妙な骨、一対の髑髏といったものでいっぱいだ。部屋の中央には、直径5フィートほどの、円筒状をしたクリスタル容器が鎮座している。その基部と10フィートほどの天井部は、赤い石の留め輪で固定されている。容器の中には、暗赤色の肌をした、悪夢のようなクリーチャーが押し込められている;皮の翼、張り詰めた筋肉をした手足、爪のある手と足。そのような肉体が、このせまっ苦しい空間にみっしりと詰まっている。突然、クリーチャーは容器の中で身動きして牙を剥き出すと、デーモン的な顔立ちを真っすぐにあなたに向けた。クリスタルの壁に押しつけられた顔が、不気味に歪んだ。


 タルンヘムと呼ばれるバロール(真なるタナーリ)が、アサーラックの知る「真の名:マアスヘルドゥア/Maasgheldur」と強力な魔法で、この部屋に拘束されている。アサーラックは、カンビオンからリッチに形質転換する儀式を執行するにあたり、その名を見つけ出した - 彼は超自然的な父親を知る必要があった。タルンヘムが人間の女性を襲った結果、母親がアサーラックと名付けたハーフタナーリの子が生まれたからだ(詳細についてはディサティッソの日記参照)。

 アサーラックは彼の少年期に降りかかった呪いと母の死について、決して彼の父を許さなかった。歓喜の内に復讐に取り掛かると、デミリッチは何百年にも渡ってタルンヘムを奴隷にした。実際のところ、アサーラックはタルンヘムの命令権を介して間接的にタナーリの軍勢を制御すると、最初の“墓所”、“陽を待つ都市”のパズル、ここ“終末の要塞”に仕掛けられた罠の構築作業、その警戒や機能の維持管理に使役した。そうしてアサーラックは父に対する復讐を果たしながら、その復讐心を究極化への起爆剤へと利用した。

 タルンヘムは生きているクリーチャーが部屋に入ったなら、クリスタル容器に閉じ込められたままでも気づく。PCを見つけるや否や、バロールはこもった奈落語で話し出す。「旦那様! 私はあなた様の助けを願います。お早く。私の息子めが、あなた様の侵入に気付く前に! 私を解放してください。そのうえであなた様がヤツめを打ち負かすのを手伝いましょう。棚の上に我が剣があります。あなた様に一時的な使用権を差し上げます。それを以て、この忌まわしい容器を打ち砕いてくだされ。」

 棚の1つの上に、独立した稲妻のように流れる光から作られたヴォーパル・ソードが置かれている。通常なら、所有者以外の誰かがそれを拾い上げたなら、そのキャラクターは対死魔法のセーヴィング・スローを行なくてはならない。失敗したなら即死する。成功しても10d6ポイントのダメージを受ける。タルンヘムが言ったように、PCは武器の主からバロールを閉じ込めているクリスタルの容器に使うための特別許可を得ている。これは善のPCにとって道徳的問題だ:この混沌にして悪のクリーチャーを奴隷の身分から解放することは、大いなる善に照らして試みるべきだろうか? もしPCが剣を取り上げてバロールの願いどおりに使用するなら、クリスタルは爆発して粉々に砕け散り、室内にいる者に10d6のダメージを与え、またクリスタルの破片の中から大喜びのバロールが解放される。

 バロールの剣、ヴォーパル・ソード、あるいはウィッシュのみがバロールを解放することができる。もしPCがタルンヘムを解放する前に質問するなら、タナーリはアサーラックの真の目的と究極化の意味を語る(後述)。もしバロールが最終的に解放されるなら、アサーラックは即座に気付き、2ラウンド後にはテレポートにてウィンターワイト形態を差し向ける。アサーラックが到着したなら、彼はPCに述べる。「貴公らの巧妙さは我を感嘆とさせるな;貴公らへの報償は、中枢において待ち受けているだろう。そしてあなたについては、父上」アサーラックはバロールに言った。「あなたの存在意義は、もはや無い!」

 アサーラックに操られたウィンターワイトはタルンヘムを物理的に攻撃し、タナーリにブラックファイアを与えようとする。アサーラックは彼が宿るウィンターワイトが死ぬまで戦う;その後、彼は制御用の精神を他のウィンターワイトか、中枢に鎮座するデミリッチの髑髏に移す。アサーラックは彼が使用できる呪文を完全に使いこなすことができるが、タルンヘムに対してはタナーリの高い魔法耐性(70%)を考慮して使用しない。現実的には、アサーラックは彼の父と物理的に戦う必要がない; 彼はタルンヘムの真の名を用いて彼を取り抑えることができるからだ;しかしながら、デミリッチはこの千載一遇の好機を前にして、懲罰を与える目的から彼を焼き尽くしてやろうと考えた。それにもしこの局所戦闘で敗北しても、彼は何も失わなかった。

 もしアサーラックであるウィンターワイトが彼の父であるバロールに勝利するなら、彼はその後に強力な呪文を使用してPCを攻撃する。もしウィンターワイトが負けてタルンヘムが生き残るなら、バロールは満面の笑みを浮かべて「やっと自由だ!」快哉を叫ぶが、硫黄の炎の爆発とともに消え失せる。新たなウィンターワイトを制御下にしたアサーラックが、“真の名”を使用して呼び寄せたのだ。タルンヘムにとって不幸なことに、アサーラックは“真の名”を利用してタナーリを動けない状態にして、第30区画の部屋に置かれた経箱の守護者に配置する。タルンヘムが消失か敗北した時点でバロールの剣を持つPCは刃の有害効果を受ける。

 部屋の棚は多種多様な呪文構成要素、参照用の秘術の大冊を含んでいる。そして奇妙なあれやこれやは有用性ではなく、それ自体の珍妙さから集められていた。呪文構成要素は別として、徹底的な捜索を行うことで、他の有用な(そして危険な)アイテムを発見することができる。

  • バロールの剣(タルンヘムの許可が与えられない限り、取り上げたら有害効果を避けられない)1振り
  • ヴァイオリン・オヴ・タナーリ・トーンティング(タナーリあざけりのヴァイオリン。その奏でる音曲を聴いたタナーリを苛つかせ、激怒させる)1挺
  • マニュアル・オヴ・ボディリィ・ヘルス1冊
  • トウム・オヴ・アモラレティ(この本を読んだ秩序か善属性のキャラクターは、5d4日間に渡り不安にさせる幻視と悪夢を見て、毎日5%の確率(累積)で狂気状態に陥る)1冊
  • ホットベリー10粒が入ったガラス瓶(投擲したなら衝撃により1d8ポイントのダメージを与える;噛んだなら、近接爆発によりセーヴィング・スローなしで10d8ポイントのダメージを受ける)1つ。

 ここで使われた呪文は後の遭遇のために記録しておけ;アサーラックは使用した呪文を24時間経過後に回復する(または彼の呪文書から別の呪文を記憶し直す)。