19.8 エルフの諸侯/Elf-Lords ICE4010:Mirkwood, Wilds of Rhovanionより

 森林地帯のエルフたちには多くの有能な指導者と有力な名士が集っていた。しかしながら、辺境の歴史に大きな影響を与えたのは3人のみだ。

19.8.1 オロフェア/Oropher

 ロリエンの苛烈で驕慢なシンダ公オロフェアは、第二紀の中頃にガラドリエルとその夫君たるケレボルンと袂を分かった。当時彼はアモン・ランク(後のドル・グルドゥア)の近くに住まっていたが、紛争の結果として黄金樹のエルフたちとの結びつきを絶った。オロフェアはシンダールの民を集めると緑森大森林に新たな王国を建国するため、隣人であるシルヴァン・エルフと合流した。そのようにして、彼は森の民のエルフ王となった。
 性急で短気だが、オロフェアは迅速にサウロンがもたらす危険を看破し、盟友たちに差し迫る戦争の準備をするよう伝えた。エルフ王はモルドールとの距離を置くため、3回に渡って北方に遷都を行った。最終的に、彼はエミン・ドゥイア(闇の森の山脈)の西の谷に大根拠地を設立した。彼はまたカラス・アマルス(シンダ語で「宿命の都」)に首都を置き、その西側に広大な地下宮廷を築いた。彼の国民の大多数はアヴァリ(シルヴァン・エルフ)であったが、彼は第二紀終焉の一大合戦に向けて森の国の総力を挙げて準備を進めた。
 第二紀3429年、遂に戦争が勃発した。そして指輪王と戦うため、エルフと人間の間に〈最後の同盟〉が結成された。しかしながらオロフェアは、ノルドの上級王ギル=ガラドの権威に従うことを拒んだ。彼には命令一下おっとり刀で飛び出す、準備万端整えられた独立志向のシルヴァン戦士が集っていたからである。これが彼の破滅の源であった。第二紀3434年、ダゴルラドへの遠征において、エルフ王はモルドール軍の前線に対して拙速とも言える突撃を敢行した。彼の軍勢は総崩れになり、オロフェアはその戦いで斃れた。輝かしい武勲もなく、救援の希望もなく。

19.8.2 スランドゥイル/Thranduil

 彼の父であるオロフェアのように、スランドゥイルも第二紀の早期にケレボルンと共にリンドンから東に旅をした。彼はエレギオン(ホリン)の設立に協力したが、他の多くのシンダと同じく、近傍に位置するモリアのドワーフに対して憎しみ以外の感情を持ち合わせていなかった。またナウグリムの方もシンダールに対して強い感情を抱いていた。そこでスランドゥイルは対立を避けるため、より東方に移住することにした。彼は霧降山脈を越え、オロフェアと共に緑森大森林の南部に移動した。そこでオロフェア家はシルヴァン・エルフとの関係を深め、最終的に彼らはシンダとの血縁を絶ち、森林王国の創建へと進むことになった。
 スランドゥイルは第二紀3434年に玉座を引き継いだ。しかしながら、彼の軍勢は壊滅しており、最初の数か月間はその再建に費やすことになった。そのような諸々の結果、彼がオロフェアの王座に座れたのは7年が過ぎた後だった。サウロンの敗北と第二紀の終焉の後、彼は父の仕事を引き継いで緑森の高地から森の民の統治を始めた。
 第三紀1050年にサウロンが帰還すると、その者は“死人占い師”として緑森に姿を現した。スランドゥイルは直ちに新たな脅威を認識したが、“死人占い師”の正体までは看破できなかった。しかし彼は危険を感じた。これにより新たなアラズリンド、すなわち“エルフ王の宮廷”の探究が始められた。それが完了したのは第三紀1100年だった。そこからスランドゥイルは森林王国を統治したが、その領土は常に縮小していった。けれども、闇の森を覆う影が濃くなる一方でありながら、スランドゥイルは征服への抵抗に成功した。彼は這い寄る敵に対して、粘り強く弾力的に応対し、眠りなき警戒の手を緩めることがなかった。

19.8.3 レゴラス/Legolas

 レゴラスはスランドゥイル王の長子にして後継者だ。非常に魅力的かつ交渉事に長けた彼は、人間に不満を覚えることがなく、またドワーフに対して驚くほど寛容だった。彼は探究的で非常に明晰でありながら、ノルドと異なり驕慢ではなかった。彼の父や祖父と異なり、レゴラスは他者と協力することの利点と、時には妥協しなくてはならない必要性を熟知していた。
 優秀な若き政治家であることに加え、レゴラスは驚嘆すべき弓師にして有能な森林官だ。彼は旅を重ねて荒野や戦場で様々な挑戦に立ち向かうことで自信に溢れている。