ミュンヘン

 剣に拠りて立つ者は剣に因りて倒れる
 単純にアメリカ向きにユダヤマンセーではなく、ユダヤの侵略で祖国を追われたパレスチナの立場も描いたり、アラブの視点も描いたりと正解のない映画だった。
 現実は辛いね。
 追っていた者が追われる者となり、本来的には味方であったものが敵となり、主人公たちは徐々に追い詰められていく。復讐の意味と現実。復讐に次ぐ復讐の連鎖。他者に成し得ない事を成す心を勇気というなら、誇りというしがらみを捨て、復讐を止める者こそが真の勇者なのかもしれない。


 最後、主人公が追い詰められ、その死を予感させるシーンで物語は終わる。
 死狡兎烹走狗(こうとししてそうくにらる)
 「ああ、かくなるは世の常なりき。つとめを終えし英雄の、げに悲しきや……」
                                 ダグダーの歌より